農業における人手不足、高齢化などは年々、深刻化しています。
ドローンによる省人化、省労力化はそれらの課題解決に向けて期待が寄せられています。ドローン農薬散布のメリット・デメリットについて考え、農薬散布以外の活用についても解説します。
ドローン農薬散布というのはドローンを使って農薬散布をするわけですが、皆さんが想像するよりも大きいドローンを使用する必要があります。機体も全長2~3メートルの幅になりますので相当の大きさです。ドローンに噴霧器がついており、薬剤を積んで飛行しながら散布します。
広い田んぼに満遍なく散布するため、タンク積載量も最大30リットルになるものもあります。また、ドローン農薬散布機の中にはGPSで完全制御もできる機体もあります。プログラムにより見守りは必要ですが、全自動で農薬散布が行えます。この田んぼにこのくらい散布する、とプログラムをすると指定された場所に飛び、散布して、ビューと帰ってきます。
ドローンの機動性の高さを活かし、小回りが利くので丁寧な散布が可能となります。従来の散布方法は人が散布機を担いで田んぼの中に入って散布していましたので、ムラがあったり、散布していなかったりと、勘に頼らざるをえませんでした。ドローンは過去飛行のログ(記録)が残るため散布した個所を確認できますので、ムラ・ロスが出にくいです。
ドローンの農薬散布のスピードは10aあたり1分で散布することができます。人が散布すると10aあたり10分はかかると言われており、農薬散布にかかる時間は大幅に短縮されます。
また、人力のように重い機械を担いで散布することを考えれば、農家の高齢化・人手不足という点を解消することができます。
ドローン本体は100~200万円程度するため、決して安いわけではないですが、農薬散布用の無人小型ヘリコプターは機体価格のみで1000万円以上するものが多いです。
農薬散布だけでなく肥料散布や農作物の確認などにも使えることから、用途を広げることによりコストパフォーマンスは高くなります。
ドローンの操作自体は簡単ですが、普通のドローン飛行と違い、農業に特化した特別な講習を受ける必要があります。農薬散布の場合は、ドローンの落下物という扱いになるため通常の運用とは異なります。しかも、そのため国土交通省物件投下の飛行許可を行うなど、農家の方にとって新しく覚えることが多くなります。
PC・タブレッドなどの操作も必要にあり、ITリテラシーも最低限求められるため、高齢化の農家にとって導入は難しいとも言えます。
ドローン自体のデメリットとして、バッテリーの消耗があります。長時間の連続での作業ができません。農薬散布では重い薬剤を散布するため、バッテリーの消費が激しいです。
作業の際には予備のバッテリーを相当数用意する必要があります。そのため、本体、薬剤よりもバッテリーの方が重くなりかねません。バッテリーの性能も上がってきているため、今後は改善されていくと期待します。
以上、農薬散布についてみてきましたが、今現在、農業分野でのドローンはもっと進んでいます。IoT(インターネットオブシング)農業とも言われており、スマート農業の中心にドローンが使われております。
センシングとは、検知器、感知器などで測定することを意味しますが、ドローンが田んぼの稲の育成状況を測定するのです。稲の葉の色で判断し、肥料の過不足を判断します。また穂の色で収穫時期の適期など田んぼの上空からモニタリングできるのです。
このデータを気温、日照とあわせれば、より詳細な情報が得られます。AIの活用も進んでいるので、農家の勘をデータ化できるようになりました。勘に頼らない、より安定した農業経営ができるようになります。
テレビ番組「ガイアの夜明け」でもゆかり農家のドローン活用事例が上がっております。
▽以下、記事抜粋
“「ゆかり」作りへのこだわりは工場の中だけではない。三島食品の赤じその自社農園。ふりかけメーカーが自ら原料を栽培するのは珍しかった14年も前から始めている。
その畑で、会長の三島豊(67)がドローンを飛ばしていた。
「上空から撮ったたくさんの写真を3Dデータにして計算し、農場の成長分布を出すことができないかと」(三島)
成長が遅い場所を見つけ出し、そこの土壌を改良しようというのだ。”
参考記事:https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2021/024662.html
可変施肥というのは、必要なところに必要なだけ施肥するものです。先程のセンシングにより、植物の生育状況をデータ化できます。肥料が足りているところ、足りないところ、というのが一目瞭然なわけです。それをGPSに落とし込むことで、必要なところに必要なだけ施肥できるのです。プログラムされたドローンには施肥する肥料の量もコントロールできますので、それが可能となります。以前は液肥だけでしたが、今は粒剤肥料にも対応しています。
農産物は生き物なので、必要なだけの肥料を与えれば良いわけではありません。例えば、米の場合は稲が育つ、ということと米が育つということは別のことです。肥料が稲の育つ力になると、稲だけが伸びます。
つまり草だけが伸びて収穫の頃には、倒れてしまいます。倒れた稲の稲刈りは効率が悪く、しかも米の品質も落ちてしまいます。反対に稲の育つ力を抑えようとすると、穂の部分に栄養がたどり着かないということもあります。肥料というのは必要な時に必要なだけ与える必要があるため、生育段階に応じてちょうどいい加減で施肥しなくてはなりません。ドローンを活用することで、必要な時も判断できますし、必要な量を調整することができるということです。
ドローンでの播種も可能となりました。種もみを丁寧に育てて、田植で移植するというのが主流ですが、直播という手法も増えてきました。種もみをそのまま播種するので、育苗という作業がすべて必要なくなります。育苗には2カ月近くを要しましたので、そのコストをそっくり抑えることができます。
中山間地での獣害は深刻化しています。農作物への被害総額は156億円と試算されるほどです。ドローンを導入して野生鳥獣を駆除する方法が取り組まれています。ドローンを使って野生鳥獣を監視する、ドローンにサーチライト、音響装置を取り付けて野生鳥獣を追い払うことができます。狩猟と組み合わせることもできます。ドローンのモニタリング機能を使って効率的に駆除することが可能です。
農薬散布用ドローンを提供しているメーカーでは、DJI、マゼックス、クボタ、ヤマハ発動機が代表的です。
世界最大のシェア率を誇る大手ドローンメーカーです。あらゆる分野で、最先端のドローンがラインナップされています。農業ではセンシングやデータプラットフォームの開発などもいち早く取り組んでいて、包括的にスマート農業をサポートしています。
「農業用・林業用ドローン×国内メーカー累計販売台数No1」で日本でも有名なマゼックス。日本国内での実績が豊富できめ細かなサポートを売りにしております。
日本国内においての最大手農機具メーカーで、日本だけでなく世界の農機業界をけん引する存在です。クボタの農薬散布ドローンはDJIをベースにしていますが、全国のクボタグループ販売店を通じたサービス体制が充実している点が特徴です。農家にはなじみのメーカーですし、手厚いサポートで安心してドローンを導入できます。
オートバイが有名なメーカーですが、農業でも実績があります。農機具メーカーとしても独自の開発思想で、ユニークな農機具、機械も多く、技術、性能には定評があります。ファンも多いのが特徴です。ドローンでは後発ですが、農業用無人小型ヘリコプターではトップメーカーで長年の開発で培われたノウハウがあります。
ドローンを使用した農業は、全国で普及してきました。スマート農業が進むことで、集められるデータはもっと増えるでしょう。集められたデータを活用して、また新しい発見があるかもしれません。まさにその中心にドローンがあるといえますので、ますますドローン農業に注目です。