ドローンはすでに撮影や農薬散布などに活用されていることは、広く知られています。
しかし、ドローンの活用方法は撮影や農薬散布だけに留まりません。
すでに実用化されているものや、これから実用化を目指して実験が繰り返されているものを含めて、ドローンはさまざまな分野で活用されています。
本記事では、ドローンの活用事例を解決が必要な課題と共に解説します。
はじめにご紹介するのは、すでに実用化されているドローンの活用方法です。
搭載したカメラで迫力ある映像や写真を撮影する空撮が有名ですが、そのほかにも活用事例があります。
ドローンの活用事例として最も有名なのは、写真や動画の撮影です。
ヘリコプターや飛行機などを用いた従来の空撮より、安価で対象物に接近した撮影が可能になりました。
映画やテレビ番組はもちろんのこと、個人がYoutubeなどに投稿する動画でもドローンを活用した個性的かつ迫力ある映像や写真が珍しくなくなっています。
また、写真や動画の撮影は映画やテレビ、個人の趣味だけでなく観測や測量、災害救助の面でも活用されています。
測量や点検の分野でもドローンはすでに活用されています。国土交通省が発表した測量・点検における活用事例は以下のとおりです。
従来の点検はすべて人力、もしくはヘリコプターや航空機を用いて行われてきました。
しかし、点検のための足場の作成・航空機のチャーターなど費用と手間がかかるため、できる回数が限られていました。
ドローンを利用すれば、安価かつ安全に定期点検が行なえます。
民間でもドローンを活用した点検や測量の導入が進んでいます。
一例を挙げると、送電線の点検、屋根や高層ビルの壁面の点検などです。
送電線は高所、かつ道路の整備が進んでいない山間部にあるものも多く、目視による点検は時間も手間もかかっていました。
屋根や高層ビルの壁面の点検も同様です。
ドローンを利用すれば、安全かつ安価、そして短時間で点検が確認ができます。
定期点検はもちろんのこと、災害が起きた後の緊急の安全確認などもドローンの活王が期待されています。
地震や台風などの大規模災害が発生した際、早急な救援活動の為に現状の確認が重要です。
しかし、大きな被害が発生している場所に不用意に人が入り込むと二次被害が発生する恐れがあります。
そのため、ドローンを飛ばして上空から災害の状況を確認すれば早急な救助計画が立てられます。
2017年に発生した「九州北部豪雨災」や2016年発生の「熊本地震」はドローンを用いた被災状況確認が実際に行われました。
近年、人手不足が深刻化している農業では、ドローンを活用した「スマート農業」の導入が進められています。現在、実用化されているのは農薬の散布と作物の生育状況分析や作付調査などです。将来的には、農作物の運搬などもドローンを用いて自動化することなどが目標です。
出典:(C) 写真AC
ここで紹介するのは、実用化を目指して実験や検証が進められている事例です。将来的に、ドローン活用事例が広がれば人手不足をはじめとした労働問題が解決する可能性もあります。
現在、ドローンの活用が最も望まれているのは物資の運搬をはじめとする物流です。ドローンによって無人で荷物が運搬できるようになれば、物流業界の人材不足、道路の渋滞などいろいろな問題が解決できる可能性があります。
実際、国土交通省では長野県伊那市、千葉県千葉市など全国でドローンを用いた物流の実証実験を重ねてきました。
現在の法律では、ドローンを上空151m以上で飛行させることや目視外による飛行を原則として禁止しています。
しかし、技術の進歩や法改正によって151m以上の上空でドローンが長時間飛行できるようになれば、物流によりドローンが活用できるようになるでしょう。
なお、アメリカなどは医薬品など軽量かつ緊急を要する物資の配送にドローンがすでに活用されています。
ドローンを用いた広告も世界中で広まっています。
2015年にブラジルではドローンにマネキンをつけて飛ばすといった大胆な広告を行うアパレル会社が出現しました。
また、アメリカではペプシがドローンを活用した広告を作成して話題になった事例もあります。
風船や飛行船、飛行機を利用した広告はアドバルーンや飛行船など昔から存在していました。
日本も法整備がすすめば、ドローンを活用した広告が新たに出現する可能性もあります。
出典:(C) 写真AC
ドローンを今以上に活用するには、解決しなければならない課題もたくさんあります。
ここでは、代表的な課題を4つ紹介します。
現在のドローンはバッテリーをフル充電した場合でも10~40分程度の飛行が限界です。
動画や写真の撮影や点検に活用するならば、このくらいの時間でも十分かもしれません。
しかし、ドローンを物流に活用する場合、最低でも数時間は連続して飛行できるようにしないと実用化は難しいでしょう。
特に、山間部や離島など現在でもスムーズな物流が難しい場所にドローンを導入するならば、性能の向上が必須です。
2025年に開催される大阪万博では人が乗れるドローンの導入が話題の1つになっています。
人が乗れる大型ドローンが実用化されれば、ドローンの活用の幅がまた広がるでしょう。
日本では、バッテリーを含めて総重量100グラム以上のドローンは航空法の規制を受けます。
航空法では、住宅密集地や特定の施設上空は届出がないとドローンを飛ばせません。
また、夜間飛行、目視外飛行は原則として禁止されており、許可を受けるには資格や届出が必要です。
このほか、ドローンの飛行は各自治体の条例でも規制されており、2024年1月1日に起こった能登半島の地震でも、民間でのドローンの飛行は早々に禁止されました。
安全のためとはいえ、法律の規制がドローンの活用の幅を狭めていることには代わりありません。
早急な法律の整備が求められています。
現在、ドローンの操縦は資格なしでも行なえます。
しかし、物流や点検、検査にドローンをより活用するには一定のレベルをクリアしたパイロットの育成が必須です。
2022年12月よりドローン操縦に関する初の国家資格である「無人航空機の操縦者技能証明制度」がスタートしました。
まだ資格所有者は少なく、知名度も低いですがこれからドローンの需要がよりマスにつれて人気の資格になっていくことが期待されています。
なお、ドローン操縦士の国家資格を取得すれば、「有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(補助者の配置なし)」が可能となります。
現在、撮影や点検に活用されているドローンの多くが中国やアメリカのメーカーの製品です。ドローンを現在より活用するには国産で安価なドローンの量産が必須の課題といえるでしょう。
現在、秋田県にある東光鉄工所や群馬県の株式会社石川エナジーリサーチなどが、ドローンの製造、販売に力を入れています。国産ドローンの製造がもう少し活発になれば、活用の幅がより広がる可能性が高まります。
本記事では、ドローンの活用事例や活用目指して実証実験が進められている分野、解決が必要な課題などを紹介しました。
ドローンの活用は人手不足が深刻化する日本の労働市場では必須といえます。
特に物流の分野ではドローンの導入が本格化すれば、現在問題となっている課題が一気に解決する可能性もあります。