「ドローン」と一口に言っても、形状や用途にはいくつもの種類があります。
そこで本記事では、ドローンの種類をさまざまな観点から解説します。
ドローン本体だけでなく、ドローンに関わる法律や資格にもいくつも種類があるので合わせて紹介します。
ドローンの購入を検討中の方は、それぞれの種類の違いを押さえて自身に合った製品を選択しましょう。
出典:(C) Unsplashのdavid henrichsが撮影した写真
ドローンの種類は法律などで厳密に規定されているわけではありませんが、主に以下のような種類に分けられます。
そもそも、ドローンとは遠隔操作または自動制御によって飛行する無人航空機のことを指します。中でも重量100g以上の無人航空機は航空法上登録が義務化されています。
100g未満の製品には原則登録義務が発生しませんが、ドローンであることに変わりはないので、合わせて解説しています。
最も一般的なドローンイメージに近いのは「空撮用ドローン」です。その名の通り、空撮用にカメラを搭載しており、飛行しながら動画や写真の撮影ができます。
近年ではカメラも高性能になっており、4K8Kの高画質での撮影が可能。振動によるブレを補正するジンバルなども合わせて搭載されているのが特徴です。
広い意味では軍用でも産業用でも空撮に使えば「空撮用ドローン」ですが、ここではあくまで一般的に販売されている製品を指します。サイズも手のひらサイズから本格的な空撮ができる大型サイズまで種類は様々です。
販売製品の選択肢が多いので、用途に合ったスペックの製品を選びましょう。なお大半の製品が100gを超えるため、国土交通省への機体登録が必須となります。
「産業用ドローン」は、農業から物流までさまざまな仕事で使われる業務用ドローンのことです。設備点検用に赤外線カメラや農薬散布用の機器が搭載されるなど、従事する業務に特化した装備が付いているのが特徴です。
また、コントローラーで操作することが多い空撮用ドローンと違い、プログラムによって自律飛行できるモデルも多く販売されています。近年では災害救助やインフラ設備の点検でも活用される事例が増えており、高性能なモデルが多数開発されています。
「競技用ドローン」は、ドローンレースなどの競技に使用されるドローンの種類を指します。競技内容によってカスタマイズし、軽量化を行ったり一般的なドローンよりも高速で飛行できるなどの特徴があります。
カメラだけでなく姿勢制御や衝突回避の機能が搭載されていない場合も多く、操作難易度が高いため練習が必要ですが、その分高速かつダイナミックな操縦ができるのが魅力。なお、競技用のドローンは重量も軽く小型サイズの製品が多いため、機体登録不要なケースがあります。
「軍用ドローン」は、軍事用に利用されるドローンの種類です。近年ではウクライナの戦争でも、ドローンに爆弾を積んで施設を破壊するニュースが流れるなど話題を呼びました。
ドローンで直接攻撃するだけでなく偵察用の小型モデルや、過酷な環境でも耐えうる高い耐久性を持つモデルなどその用途はさまざまです。自衛隊や米軍でもドローンは採用されており、ミサイルなどと比べると比較的安価で自律飛行できるリスクの少ない兵器として注目されています。
「水中用ドローン」は、水中での運用に特化したドローンです。ドローンといえば空を飛ぶものというイメージが強いですが、水中で活用される場合もあります。
特徴としては、水中は電波が届きにくいので有線接続されるものが多く、ソナーなど独自の装備で障害物を検知します。また、ロボットアームを付けて物を掴んだり、魚に餌をやったりといった機能が搭載されているモデルもあります。
近年では日本領海の監視など、防衛・安全保障面での活躍も期待されているドローンです。
「FPVドローン」とは、FPVカメラを搭載したドローンの種類です。FPVカメラは一人称視点のカメラのことで、ゴーグルにカメラ映像を送信してまるでドローンに乗り込んでいるかのような臨場感を味わえます。
競技用だったり空撮用だったりと用途はさまざまですが、FPVカメラを搭載していればFPVドローンとなります。リアルタイムに映像を確認しやすいのが利点です。
なお、注意点としてはFPVカメラを使用する場合、映像の送受信に5GHz帯の電波を使用します。5GHz帯の電波利用は電波法の規制を受けるため、アマチュア無線技士4級の資格や無線局の開局手続きが必要です。
このように、使用するためには少し手間がかかるのもFPVドローンの特徴となっています。
「トイドローン」は主に100g未満の、航空法における登録義務対象外となるドローンを指します。製品の種類は数多くありますが、概ね数千円からの手頃な価格と小型のサイズが特徴です。
200g以上の一般的な空撮ドローンは最低1万円~数十万円と高額になりがちなので、趣味で楽しむ方や初心者の方はまずはトイドローンから試してみるのがおすすめです。バッテリー容量も少ない場合が多いですが、カメラ性能は決して悪いわけではありません。
4Kの高画質で撮影できる製品もあるため、ちょっとした撮影なら十分に対応できます。
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プロペラ(ローター)の数や形状でもドローンの種類は異なります。形状の違いによるドローンの種類は、主に以下の5通りです。
それぞれ機体制御などの面で特徴があるので、詳しく解説していきます。なお、プロペラとローターは同一のものとして見られることが多いですが、厳密には以下のような違いがあります。
「トライコプター」は、3つの回転翼を持つタイプのドローンです。トライコプターに限らず、複数のプロペラを持つドローンは「マルチコプター」と呼ばれることもあります。
プロペラは数が少ないと飛行が安定しにくいため、トライコプター自体はあまり一般的ではありません。一方で、軽量で後からパーツを取り付けやすいという利点があります。
「クアッドコプター」は4枚の回転翼が付いたドローンの種類を指し、ドローンの中では最も一般的な形状です。機体を空中制御しやすく、重量も軽めなので小型の製品も作りやすいのが特徴です。
空撮用から産業用まで、多くのドローンがクアッドコプタータイプとして販売されています。強いて難点を挙げるなら、ローターが1つでも壊れて動かなくなると姿勢制御が難しくなるという点です。
基本的には価格と性能のバランスを見ても、クアッドコプタータイプの製品を選ぶのがおすすめです。
「ヘキサコプター」は6つの回転翼を持つドローンの種類です。クアッドコプターよりもさらに安定した飛行が可能になります。
さらに、クアッドコプターには無い利点として、ローターが1つ壊れても他の5つで姿勢制御して飛行し続けるようプログラムできます。ただし、クアッドコプターよりも重量が増す点には注意が必要です。
ヘキサコプターも空撮用ドローンから産業用まで、比較的メジャーな種類で、さまざまなモデルが販売されています。
「オクトコプター」の回転翼は8つです。形状別のドローンの種類の中では最もローターの数が多くなっています。
ヘキサコプターよりもさらに安定した飛行を可能とする種類で、一般用よりも産業用など安定性が強く求められる場合に採用されます。難点としては、重量が重くなるという点です。
ローターを8個も搭載しなければならないため、重量・サイズともに大きくなってしまうのです。一方で、本体サイズが大きくなると重たい高性能な機材も搭載できる利点もあります。
「固定翼型ドローン」は、マルチコプターではなく飛行機のような形状をしたドローンです。大きな主翼とプロペラを1つ搭載したモデルが主流で、風の力で安定した飛行と長時間飛行を可能とします。
風の影響を受けにくい一方で、垂直移動ができないため離着陸にマルチコプターよりも広いスペースを取るのが難点です。バッテリーの消費が少ないうえに重たい機材を乗せやすいという利点から、観測用など産業分野で活躍する機会が多くなっています。
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ドローンは操作方法が主に2種類あります。
ラジコン型はその名の通り、ラジコンのようにコントローラーを使用してドローンを操る種類です。コントローラーのことを「プロポ」と呼び、スマホと連携して代用する場合もあります。
また、プロポの操作方法には「モード1」と「モード2」の2種類があり、スティックの左右の操作が異なります。
左スティック | 右スティック | |
モード1 | 前進・後退・旋回 | 上昇・下降・左右移動 |
モード2 | 上昇・下降・左右移動 | 前進・後退・旋回 |
日本ではモード1が主流ですが、多くの場合設定変更可能です。
次に、自律飛行型はあらかじめ設定したルートに沿ってドローンが自動で動くタイプのドローンです。GPSを活用して移動し、衝突回避などもプログラミングできます。
かつてはプログラミングスキルが必須でしたが、近年ではアプリなどで比較的簡単に設定できるようになっているので、産業分野などで活用機会が増えているのが特徴です。
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ドローンに特に関連する法律の種類は、主に以下の通りです。
法律の種類 | 主な関連事項 |
航空法 | ・100g以上の無人航空機が対象・飛行禁止空域の制定・機体登録義務など |
小型無人機等飛行禁止法 | ・全てのドローンが対象・飛行禁止空域の制定など |
電波法 | ・ドローンに搭載された無線設備の規制 |
条例 | ・都道府県などが管轄する飛行規制や飛行禁止区域 |
もちろん、民法や道路交通法など基本的な法律は大前提となります。ドローンを飛行させるには、さまざまな法律上の手続きを経る必要があることを覚えておきましょう。
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2022年の航空法改正と共に、ドローン操作の国家資格が2種類創設されました。
資格 | 概要 |
一等無人航空機操縦士 | レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が許可申請のうえ可能 |
二等無人航空機操縦士 | 以下の特定飛行が可能・150m以上上空・人口集中地区上空・空港周辺の飛行・緊急用務空域の飛行・夜間飛行・目視外飛行・人や物との距離が30m未満の飛行・催し物上空の飛行・物品の投下・危険物輸送 |
最大の違いは、一等無人航空機操縦士を取得するとレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)が可能になります。二等でも一部の許可申請を省略できるので、ドローン活用の幅が大きく広がります。
特に業務でドローンを扱う方は取得を目指すのがおすすめです。
出典:(C) UnsplashのVictor Larracuenteが撮影した写真
ドローンの主要メーカーの種類について解説します。世界中でさまざまなドローンメーカーがありますが、中でも有名なメーカーを5つ紹介します。
大手メーカーはサポートが充実していたり、商品の信頼性が高かったりと利点もあるので、どこのメーカーが良いか分からない方は参考にしてみましょう。
なお、日本のメーカーは世界的なシェアはあまり大きくありません。しかし、ソニーやヤマハといった大手メーカーも開発しているので、気になる方は合わせてチェックしてみましょう。
DJIは中国のメーカーで、世界最大シェアを誇るドローンメーカーです。日本国内にも認定ストアがあるので見かけたことがある方もいるのではないでしょうか。
「DJI Mavic」などメジャーな機種を多く発売しており、個人用としても産業用としても大きなシェアを獲得しています。高性能かつ比較的低価格で購入できるので、ドローンを買うとなればまずはDJIから確認するのが良いでしょう。
アメリカの大手半導体メーカー「Intel」からもドローンが発売されており、マーケットシェアは2位をなっています。東京オリンピックの開会式をはじめ、ドローンショーを頻繁に開催していたことでも知られてます。
現在はドローンショーは別会社に引き継がれていますが、ドローン事業自体は今でも高いシェアを獲得しています。
Yuneecは香港のドローンメーカーです。Intelも出資しており、マーケットシェア第3位の大手となっています。
「Typhoon」シリーズなど高い安定性が特徴のドローンを発売しています。
Parrotはフランスのドローンメーカーで、産業用ドローン「ANAFI」シリーズを主要製品として展開する老舗企業です。以前はマーケットシェアも高い位置を占めていましたが、現在は第4位となっています。
株式会社ACSLは日本のドローンメーカーで、産業用ドローンに特化して開発しているのが特徴です。国産産業用ドローン「蒼天」が有名で、風雨に強くさまざまな分野で活躍しています。
国産のドローンメーカーは珍しいので、業務用で探している方はチェックしてみましょう。
出典:(C) UnsplashのChristian Langenhanが撮影した写真
本記事ではドローンの種類について解説しました。ドローンは用途や形状によってさまざまな種類が展開されており、適切なものを選択することが重要です。
また、関連する法律や国家資格にもいくつかの種類があるので、ドローンを扱う際には押さえておくと良いでしょう。特に2022年の航空法改正以降、ドローンはさまざまな規制を受けています。
登録義務や事故発生時の報告義務など、多くの責任が付いてまわる点には注意が必要です。ドローンを安全かつ有効に活用するためにも、本記事で紹介したドローンの種類や法律などの関連事項を参考にしてみてください。