ドローンには赤外線カメラを搭載することが可能で、後付けだったりはじめから搭載されていたりとさまざまです。
そんなドローンの赤外線カメラは、どんな用途に使用されるのかを解説。
おすすめの赤外線カメラも紹介しているので、購入を検討中の方はぜひチェックしてみてください。
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ドローンの搭載する赤外線カメラの概要について、以下の3点について解説します。
赤外線カメラとはそもそも何なのか、付いていることでどんなメリットがあるのか知りたいという方は要チェックです。
赤外線カメラとは、物体から発せられる赤外線を、電気信号で視覚化するカメラのことです。
物体は温度を持つと赤外線を放射するため、この赤外線の温度の差を画像処理によって可視化しています。
そのため、夜間や目視では捉えられない変化を、レンズを通して見ることが可能です。
例えば、暗闇の中に動物が潜んでいたときに、通常の目視では見えなくとも、赤外線カメラを通せば動物の体温の分温度が違うため、赤外線レンズでははっきりと目視できます。
ドローンに赤外線カメラを搭載するメリットは、大きく分けると以下の通りです。
温度変化が視覚化できるため、目視では見えなかったものを見ることができます。
そのため、人の手が入りにくい場所での作業を可能にしたり、夜間など目視では捉えにくい環境下でもさまざまな作業を可能にしてくれるのです。
また、それに伴って、従来発生していた作業のコストカットや精度向上にも繋がります。
例えば、建造物の外壁点検の場合、足場を組んで人が昇って点検していた作業を、ドローンがあれば地上からの操作だけで作業ができます。
足場のコストだけでなく、安全性を確保し、作業効率の向上などにも貢献が可能です。
ドローンの赤外線カメラで撮影する際の、主な注意点を解説します。
ドローンは風や気温の影響を受けやすいのがデメリットです。
さらに赤外線カメラの場合、日照の影響を強く受ける点も覚えておきましょう。
例えば、外壁点検などの際、外壁の温度の違いから異常を見つけ出していきますが、日照時間が長すぎると、外壁が温まり過ぎて違いを発見しにくくなる場合があります。
また、場所によっては条例などの法規制を受けることもあるため、利用前には確認が必要です。
加えて、ドローンは撮影はできても作業ができるわけではないので、異常を検知した場合などは危険な作業であっても人の手で行うケースが発生する可能性があります。
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ドローンの赤外線カメラを使った、主な活用事例を5つ紹介します。
他にも、軍用として使用されることもあります。
2023年8月には、ウクライナ軍が、ロシア軍の敷設した地雷を赤外線カメラを搭載したドローンで検知したと米メディアのCNNが報じていました。
Ukrainian sappers have begun using a new demining tactic: waiting for enemy mines to warm up in the heat, — @CNN.
— UNITED24media (@United24media) August 16, 2023
As darkness falls and the air cools, the sappers launch drones equipped with thermal imaging cameras, on the screens mines heated by the sun appear to "glow". pic.twitter.com/igvZQRPthc
個人が軍用に使用することはほぼありませんが、それ以外にも多数の用途があるので参考にしてみてください。
ドローンの赤外線カメラは、近年太陽光パネルの点検用として注目されています。
太陽光パネルは、故障箇所などに異常発熱を起こすことがあります。
「ホットスポット」と呼ばれる発熱箇所を、上空からドローンの赤外線カメラで撮影することにより効率よく発見できるのです。
従来は人の手で赤外線カメラを操作しながら点検を行っていましたが、ドローンの普及により、広大な敷地に設置される太陽光パネルを短時間で点検できるようになっています。
住宅やインフラ設備などの点検にも、ドローンの赤外線カメラは使用されます。
建築基準法において、竣工から10年が経過した建築物は外壁調査が義務付けられていますが、ドローンを使うことで効率よく作業を行うことが可能です。
従来、外壁調査はゴンドラを設置して打診棒などを使い、人の手で一つ一つ診断する必要がありました。
ドローンの赤外線カメラは、塗装の浮きや漏水などを微小な温度差で捕捉できるため、効率的かつ高い精度の作業を可能とします。
工場や発電所といった設備の温度異常も、赤外線カメラなら瞬時に特定が可能です。
近年では、国土交通省が認定する資格に、赤外線診断士のコースも登場しています。
ドローンの赤外線カメラは、鹿やイノシシといった野生動物の監視・生態調査にも使用されています。
警戒心の強い野生動物は、人が近づくと逃げてしまいますが、ドローンの赤外線カメラなら上空からでも撮影できるため調査がしやすくなります。
また、野生のクマなど人に害を及ぼす可能性のある動物が近くに潜んでいないかを調査し、事前に山に追い返すといった予防策にも活用可能です。
広大な山中や、崩落した瓦礫の下などで遭難した人命の救助にも、ドローンの赤外線カメラは活用されています。
広い範囲を効率的に捜索できるだけでなく、危険な夜間の捜索も安全かつ迅速に行うことが可能です。
ドローンメーカーの大手「DJI社」によれば、2023年7月にはドローン技術によって救助された人名は世界で1,000人を超えたと発表されています。
農作物の生育状況を、精密に管理するのにドローンの赤外線カメラは活用できます。
農場全体の温度分布を把握することで、農作物の生育状況に差異が無いかを確認可能です。
さらに、生育状況を視覚化すれば効率的な肥料の運用や品質への投資を行えるようになり、コストカットなどの副次的な利点も発生します。
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ドローンに搭載できるおすすめの赤外線カメラについて解説します。
製品ラインナップは以下の通りです。
それぞれ特徴があるので簡単に解説します。
これからドローンの赤外線カメラを購入する方はぜひ参考にしてみてください。
公式サイト | https://enterprise.dji.com/jp/zenmuse-h20-series/specs |
製品名 | Zenmuse H20T |
参考価格 | 1,185,800 円 (税込) |
サイズ | 167×135×161 mm 828±5 g |
防塵防滴性能 | IP44 |
動作環境温度 | -20℃ 〜 50℃ |
対応SDカード | microSDカード |
「Zenmuse H20T」は、ドローン市場で高い市場シェア率を誇るDJI製のカメラです。
以下のようなレンズをこれ一台で利用できます。
赤外線カメラに加えて、最大23倍のハイブリッド光学ズームカメラと、視野82.9°の広角カメラをワンクリックで同時に撮影可能。
法人向けドローンとしても申し分ない性能の、オールインワンモデルとなっています。
公式サイト | https://www.flir.jp/products/vue-pro/?vertical=suas&segment=oem |
製品名 | FLIR Vue Pro |
参考価格 | 660,000 円 (税込) |
サイズ | 57.4 x 44.4 mm x 44.4 mm 92.1~113.4g |
動作環境温度 | -20℃ 〜 50℃ |
対応SDカード | microSDカード |
サーモグラフィ・赤外線カメラなどを開発・製造するアメリカの企業「フリアーシステムズ」から発売されている、ドローン用の赤外線カメラです。
撮影した静止画・動画をmicroSDカードに保存可能なだけでなく、Bluetoothで接続した専用アプリで解析・PWM入力・画像最適化などを行うことが可能。
640×512の高い改造度で撮影が可能な、プロ仕様の製品です。
公式サイト | https://www.dji.com/jp/mavic-2-enterprise/specs |
製品名 | Mavic 2 Enterprise Dual |
参考価格 | 437,000円 (税込) |
サイズ | ・折りたたみ時:14×91×84 mm・展開時:322×242×84 mm・重量:899g |
最大飛行時間(無風) | 31分 |
運用限界高度(海抜) | 6000 m |
最大伝送距離 ※障害物や電波干渉がない場合 | 6000 m |
動作環境温度 | -20℃ 〜 40℃ |
内部ストレージ | 24 GB |
DJI社製の「Mavic 2 Enterprise Dual」は、赤外線カメラ付きのドローンです。
有効画素数1200万画素の4K可視光カメラと赤外線カメラを搭載し、可視画像と熱源画像をリアルタイムに統合し、閲覧できます。
基本性能は「Mavic 2 Enterprise」を踏襲していますが、高度操縦支援システム(APAS)やズーム機能が使用できないなどの違いもあります。
カスタムカラーパレット機能で温度の表示範囲や色を調整可能で、空撮だけでなく外壁調査などの業務用としてもおすすめのモデルです。
既に生産は終了していますが、まだ在庫が残っている可能性はあるのでチェックしてみてください。
この記事では、ドローンの赤外線カメラについて解説しました。
ドローンの赤外線カメラは、設備点検や野生動物の調査、遭難者の捜索などさまざまな用途に活用されています。
また、夜間の撮影にも利用できるので、業務用として使用する方だけでなく、個人でも撮影の幅を広げるために購入を検討してみてはいかがでしょうか。
どれを買えばいいか迷っている方は、ぜひ本記事で解説した製品を参考にしてみてください。