蜂に対してどのようなイメージがありますか?
花や作物の受粉、害虫駆除に欠かせない存在の蜂ですが、蜂に刺されると痛いばかりでなく、最悪死に至るケースがあります。
蜂駆除で全国各地が頭を抱える中、ダイキンが蜂の駆除サービスの新しい風を作り上げました。
UnsplashのDamien TUPINIERが撮影した写真
蜂は刺して痛いイメージが強いですが、花の受粉をしたり草木の害虫を食べてくれたりと自然界ではかけがえのない存在です。
蜂の巣をみかけたら「駆除」と思われている方もいると思いますが、ヒトの害にならない場所やハチの種類によっては問題視されず巣を放置されます。
テレビやニュースで問題視されるのは「スズメバチ」や「アシナガバチ」です。
アシナガバチ、特にスズメバチの蜂毒はアナフィラキシーショックを引き起こしやすいといわれています。
アナフィラキシーショックとは発症後に短時間の間に全身にアレルギー症状が出ることで、かゆみ、唇やまぶたの腫れ、息切れ、動悸、ふらつき、嘔吐、意識障害などの症状があります。
蜂に刺された場合の多くが、15分以内には上記の症状が出てくるといわれています。
症状が出るスピードが早ければ早いほど、重症になるケースが多く、アナフィラキシーの症状が出てから15分ほどで心停止になることがあるため、早急に応急処置を行い、医療機関での治療を行いましょう。
日本では蜂毒によるアナフィラキシーショックで年間20人ほどが亡くなっておるといわれており、身近にスズメバチはアシナガバチの巣があったら早急に駆除する必要があります。
そもそも蜂駆除の方法をご存知でしょうか?
一般的な蜂の巣駆除は防護服を着用後、薬剤を噴霧させ蜂を駆除します。蜂の数を減らしてから蜂の巣を撤去します。
住宅街や学校の通学路に巣がある場合、近隣に迷惑がかからないように夜間に作業することになります。
蜂駆除は大変危険な作業です。
防護服は蜂に刺されたときでも針が身体に届かない特殊な素材を使っていますが、分厚いので着用すると非常に暑いといわれています。
蜂駆除の依頼は夏から秋にかけて多いため、防護服を着ての作業は熱中症や脱水症状を引き起こす可能性があり危険です。
また、高所に巣があると作業の難易度が上がります。そのため、駆除が困難で業者から断われるケースもあるそうです。
さらに、夜間に駆除が多いと紹介しましたが、夜間になると視野が悪くなり、作業効率が下がります。
なんといっても、蜂に刺されるかもしれないという危険が潜んでいます。
日本ペストコントロール協会によると、2020年スズメバチや蜂に関する相談は1万件を超えており、ネズミやシロアリ、蜂などの総相談件数の約7割を占めています。
業者に断われるほど、難易度の高い蜂駆除に新しい風をいれたのは「株式会社ダスキン」です。
蜂駆除はヒトが行うイメージが強い中、「ダスキン」が害虫獣駆除事業の一環として、ドローンを活用した蜂駆除の社会実装を進めています。
ドローンを活用することで、ダスキンの蜂駆除サービスで高所作業を理由に年間約2,800件断った案件のうち、約1,400件を獲得できるとしています。
株式会社ダスキンは1977年から害虫駆除サービスをはじめました。
飲食店ではゴキブリやネズミの駆除を行い、個人宅ではゴキブリやシロアリ、蜂やムカデなどの駆除のノウハウを積み上げています。
2020年、ドローンが日本で普及しはじめたことで、害虫駆除でも活用できるかもしれないとドローンを活用した蜂駆除のプロジェクトがスタートしました。
ダスキンのゴキブリ駆除の手法の一つに、ゴキブリを掃除機で吸い取って駆除する方法があります。
薬剤を撒いて駆除するよりも薬剤の使用量を格段に抑えられ環境にやさしいので、蜂駆除に応用しました。
ドローンに掃除機を乗せ、蜂を吸ったらいいというアイディアを実用化に向けて進めていきました。
蜂駆除のドローンは、ダスキンが参入する前から火炎放射器や殺虫剤を撒く機械をドローンに乗せるタイプが販売されていました。
ダスキンは、周囲の生態系や環境に配慮し殺虫剤等は使わずに、蜂の巣にぶつかって巣を破壊したり、蜂を吸い込んだりできるドローンの開発を進めました。
2021年、ダスキンが開発したハチ駆除用ドローンが兵庫県と新産業創造研究機構による「ドローン先行的利活用事業」に採択されました。
出典:(C) EVTIMES
兵庫県は人口の密集地と自然との距離が近いため、蜂駆除の相談件数が多いです。
そんな全国的にハチ駆除依頼の多い兵庫県で、蜂駆除用ドローンの早期社会実装を目指し実証試験が行われました。
蜂駆除専用のドローンには、3つのポイントがあります。
一つ目は、有線給電です。
ドローンというと無線で自由に飛んでいるイメージですが、6時間の飛行時間とパワーを出すために有線になりました。
一般的にホビードローンであれば飛行時間は最大10分程度です。
本格的な産業用のドローンでも、最大30〜40分程度といわれる中、飛行時間6時間はかなりの飛行時間ですね。
ダスキンのこだわりであるバキュームやドリルを使うときは掃除機程度のパワーを必要とするため、無線でパワーを確保するのは厳しいです。
有線といっても、ダスキンで使用するドローンは30mの高さまで飛ぶことができ、ドローンが勝手に飛んで行ってしまうリスクも防げます。
二つ目は、バキューム吸引です。
バキューム吸引は蜂の習性を利用し、掃除機で蜂を吸引します。
まずは、黒色に反応して向かってくる蜂の特性を生かし、掃除機の一部を黒く塗っておびきよせます。蜂は危険を感じると警報フェロモンを出し、仲間を呼ぶため、蜂を吸引すればするほど掃除機を「敵」とみなし、自ら掃除機の中に吸い込まれていきます。
バキューム吸引はダスキンのこだわりの一つです。
殺虫剤を空中で散布すると、蜂の巣以外に薬剤が飛散してしまう可能性が高く、蜂駆除に使用する殺虫剤は一般的に魚毒性が高いといわれています。
バキュームは環境配慮型手法といわれSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」に貢献しています。
三つ目は、パーツ換装です。
バキュームでは蜂を吸うだけでは、蜂の巣駆除はできません。
ノズルをドリルに交換し回転する刃によって巣を削り取り、落下させます。
今回兵庫県の4ヶ所で蜂の巣駆除を行い、すべて成功しました。
難易度が高く断られるケースが多かった橋梁下の約10ⅿ先にあった巣の除去にも成功したことで、従来対処が難しかった高所でもかなり有効であることが立証されました。
課題も大きく2点が明確となりました。
一つ目は、近隣の住民に対する配慮です。
ドローン自体に不信感を持っている人がいるのに加え、作業をするとそれなりの音が出ます。
蜂の巣駆除前に作業内容や安全性の説明を怠ると、理解が得られないケースがあったようです。
二つ目は、操縦者に高いスキルが必要です。
一般的なドローンは対象物に衝突しないように制御しながら飛行しますが、蜂駆除は巣にドローンを衝突させます。
そのためカメラやプロペラの破損率が高くなり、ドローンが破損した場合に操縦者が現場でメンテナンスする必要があります。
さらに、多方向から攻撃を加えますが、角度によっては、ドローンの羽の一部に力が集中して、ドローンのバランスが崩れる場合があります。応用がきく研修を実施する必要がありますね。
ドローンによる蜂駆除が実用化されると蜂による被害が減りそうですね。
私の実家は田舎で、屋根裏によく蜂の巣が作られていました。
業者に頼んでもすぐに対応してくれないと、父を筆頭に家族で巣駆除をしていました。
足場の悪い場所に設置した脚立のぎりぎりまで登っていたので、素人で落下する恐れや蜂にさされてアナフィラキシーになる恐れがあり、家族全員が無事であったことが奇跡だと感じています。
今後のこのような危険な作業をドローンが請け負ってくれると考えると感謝でしかありません。
実用化されるのが、楽しみです。