2022年12月、ドローンの操縦に関する国家資格「無人航空機操縦士」が誕生しました。
興味がある方も多い反面、民間資格はもう無価値になるのか?どうやって取得するのか?など、疑問を持っている方もいらっしゃると思います。
この記事では、国家資格「無人航空機操縦士」の概要・取得の流れ・民間資格との違いを解説します。
はじめに、2022年12月に誕生した国家資格、無人航空機操縦士の概要や取得方法や民間資格との違いについてなどを紹介します。
まだ新しい資格なので、知名度はまだまだ低めですが、これから注目が集まってくるでしょう。
無人航空機操縦士は、無人航空機を飛行させるのに必要な知識や能力を証明する資格であり、「無人航空機操縦士試験」によって技能を判定し、合格すれば取得が可能です。
無人航空機操縦士の資格区分には一等と二等があり、以下のような違いがあります。
一等無人航空機操縦士 | 特定飛行/第三者上空飛行[カテゴリーⅢ]においてドローンの飛行が可能 ※機体認証(第一種)の取得が必要 |
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二等無人航空機操縦士 | 立入管理区画上空飛行(第三者上空以外)[カテゴリーⅡ]※機体認証(第二種)の取得が必要 |
ドローンが飛行できる地域は、カテゴリー1~3まで分かれています
区分内容は、以下の通りです。
カテゴリー1 | 特定飛行区域に該当しない地域 |
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カテゴリー2 | 特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行(第三者上空以外) ※無人航空機操縦士の資格を取得しておけば、許可・承認は不要 ただし、以下に該当する場所は有資格者でも個別の承認・許可が必要 空港等周辺150m以上の上空催し場所上空、危険物輸送及び物件投下に係る飛行最大離陸重量25kg以上の無人航空機の飛行 |
カテゴリー3 | 特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う飛行。(第三者上空飛行)レベル4飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)を含む |
なお、現在のところ、無人航空機操縦士の資格がなくても許可や承認がおりれば、ドローンをカテゴリー2、カテゴリー3で飛行させることは可能です。
無人航空機操縦士を取得した場合でも、現在のところ原則として「目視内飛行」と「昼間飛行」が許可されています。ただし、許可を得れば夜間飛行や目視外飛行も可能です。
特に、レベル4飛行が可能なのは大きなメリットといえます。
飛行が許可される機体は、以下のとおりです。
機体の重量はいずれも25㎏以下と定められています。なお、飛行方法は今後改訂される可能性も高いです。
では、無人航空機器操縦士の資格は、どのような方法で取得するのでしょうか?
ここでは、資格取得までの流れを紹介します。
無人航空機操縦士試験は、以下のような2種類の方法があります。
無人航空機操縦士試験の試験内容は、学科試験・実地試験・身体検査の3つがあります。
それぞれの内容は以下の表のとおりです。
学科試験 | 一等学科試験:三肢択一式(70問)合格に最低限必要な正答率は90%程度 二等学科試験:三肢択一式(50問)合格に最低限必要な正答率は80%程度 試験内容:無人航空機に関する規則・無人航空機のシステム無人航空機の操縦者及び運航体制・運航上のリスク管理 |
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実地試験 | 回転翼航空機(マルチローター)回転翼航空機(ヘリコプター)飛行機 夜間飛行・目視外飛行・最大離陸重量25kg以上 機体・飛行条件ごとに実施。集合試験方式と出張試験方式がある |
身体検査 | 有効な公的証明書の提出医療機関の診断書の提出指定試験機関の身体検査受検いずれかの方法で受験が可能 ※最大離陸重量25kg未満の限定を変更する一等無人航空機操縦士試験を受験する場合は、「医療機関の診断書の提出」が必要 |
指定試験機関の実地試験を選択した場合は、学科試験・実地試験の両方を受験しなければなりません。実地試験の合格率は、2023年3月時点で約27%と大変低く、かなりの難易度であることがわかります。
その一方で、学科試験の合格率はかなり高く、しっかりと勉強していればほぼ合格できるといわれています。無人航空機操縦士試験はまだ始まったばかりなので、まだ合格率などのデータが正確に出ていません。これからデータが揃い出てくるはずなので、その際に改めて参考にしましょう。
なお、学科試験に合格しなければ、実地試験は受験できません。
一方、登録講習機関の講習を受けて受験する場合、実地試験が免除されます。登録講習機関については、後で詳しく説明します。無人航空機操縦士試験は自動車の免許取得に近いといわれていますが、自動車学校に相当するのが登録講習機関です。
登録講習機関で講習を受ければ、ドローンを操縦したことがない方でも試験に合格するだけの技術を身に着けることができるでしょう。
無人航空機操縦士試験の受験にかかる費用は、以下のとおりです。
学科試験
実地試験
機体の種類 | 等級 | 試験の種類 | 手数料 |
---|---|---|---|
回転翼(マルチローター) | 一等 | 基本(昼間・目視内・25kg未満) | 22,200円 |
限定変更 | 20,800円 | ||
二等 | 基本(昼間・目視内・25kg未満) | 20,400円 | |
限定変更 | 19,800円 | ||
回転翼(ヘリコプター) | 一等 | 基本(昼間・目視内・25kg未満) | 22,600円 |
限定変更 | 21,200円 | ||
二等 | 基本(昼間・目視内・25kg未満) | 20,900円 | |
限定変更 | 20,300円 | ||
飛行機 | 一等 | 基本(昼間・目視内・25kg未満) | 23,800円 |
限定変更 | 22,400円 | ||
二等 | 基本(昼間・目視内・25kg未満) | 21,500円 | |
限定変更 | 20,900円 |
登録講習機関の講習を受けて受験する場合は、実地試験の費用がかからない代わりに、講習費用がかかります。
指定試験機関の実地試験を受験することを選んだ場合、おおよそ3万円台で資格取得が可能です。
ドローンの登録講習機関とは、国土交通省に登録されているドローンの操縦技術を学べる専門学校などの施設です。
https://www.uapc.dips.mlit.go.jp/org-lic/trn-agc/allOfficeCodeList
このページから確認できるので、最寄りの登録講習機関を探してみましょう。また、エクセルに登録講習機関をダウンロードすることが可能です。
登録講習にかかる期間や費用は機関によって異なりますが、おおよそ初学者(初心者)で10万円代~100万円、すでに民間の資格を取得している経験者で、数万円~50万円台が相場のようです。
また、講習は基本と目視外に分かれており、基本は2時間~50時間、目視外は1時間~7時間程度はかかります。すでに民間のドローンスクールに通って有る程度技術を身につけ、民間資格を取得している方は、登録講習機関で講習を受ける時間も短く、費用も抑えられるでしょう。
ドローンを操縦したことがない方が操縦技術を身につけてから国家資格を取得しようとする場合は、100万円近い費用がかかることもあります。登録講習は学科試験に合格してから受講先を決めても構いません。
ドローンの登録講習機関は、初心者の場合、数か月通わなければならないケースもあります。自動車免許を取る際と同じで、通いやすい場所を選びましょう。
無人航空機操縦士試験の受験資格は、以下のとおりです。
航空法に規程されている受験停止の要綱を満たしている場合は、定められた年数は試験を受けられないので注意しましょう。
このほか、「視力が両眼で0.7以上、かつ、一眼でそれぞれ0.3以上」もしくは、「眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上」といった身体上の条件を満たしていない方も受験できません。注意しましょう。
そして、無人航空機操縦士試験の有効期限は3年間です。3年ごとに身体適正を満たしていることが確認され、最新の知識・能力に関する無人航空機更新講習を修了して免許更新しなければなりません。
ドローン情報基盤システム2.0とは、国土交通省が行っている無人航空機の各種手続きをオンラインで実現可能とするシステムです。
無人航空機操縦士を目指す方はもちろんのことドローンの機体登録などをおこないたい場合は、飛行申請が必要です。総重量100g以上のドローンを屋外で飛ばす場合は、必ず申請を行ってください。
登録は、以下から行えます。
https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/
無人航空操縦士の資格は、2022年の12月に始まったばかりです。
また、ドローンはすでに複数の民間資格があり、時間とお金をかけて取得した方も多いでしょう。ここでは、国家資格の無人航空機操縦士の資格を取得するメリットや必要性を紹介します。
ドローンの操縦に関する国家資格制定の背景には「ドローンを使った物流社会の実現」を政府が目指していることが挙げられます。
インターネットの発達により通販サイトの利用者が増える一方で、物流を担う人材は年々減少傾向です。ドローンを物流に活用できれば、人材不足も解消できるほか、交通渋滞の解消や再配達の非効率さなど、現在物流業界が抱えているさまざまな問題が解決できると考えられています。
そのための目玉が、一等無人航空機操縦士の有資格者が可能になる「第三者のいる上空でドローンを飛ばせること」です。また、二等無人航空機操縦士の資格所有者が得られるドローンを飛ばす際の手続きや承認の簡略化も、ドローンを物流に活用する際に役立ちます。
楽天が経済産業省と連携して、ドローンを使った配達を物流に活用する実験も行われており、将来的にトラックの代わりにドローンが荷物を運ぶようになるかもしれません。その際、国家資格を有していれば、大いに活用できるでしょう。
2022年12月まで、ドローンの操縦に関する資格は民間資格のみでした。
また、国家資格が定められたとはいえ、資格試験はまだ数回しか行われていないため、国家資格を取得している方はまだ少数です。2023年5月現在、ドローンは国家資格を取得していなくても許可や承認を受ければカテゴリー2までのエリアならば飛行が可能です。
ただし、第三者上空での補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)は資格なし、もしくは民間の資格だけでは行えません。ですので、まずは操縦技術を学習して民間資格を取得してから国家資格に挑んでも問題はありません。
2023年5月現在、国家資格を取得する必要性とメリットは、このようにあげられます。
無資格や民間資格を取得しただけでは、カテゴリー2・3のエリアで飛行を行ったり、夜間飛行や第三者上空で飛行を行ったりするのには、その都度許可が必要です。
許可を得るには時間と手間がかかるため、緊急の要件でドローンを飛ばすのは難しいでしょう。国家資格を取得すれば、緊急の要件があった場合でもドローンを飛ばせます。
また、レベル4飛行ができるのも国家資格を取得する大きなメリットです。このほか、国家資格は国が認めた資格なので民間資格よりも信用度が高いです。
無人航空機操縦士の資格を取得していれば、一定の操縦技術やドローンに関する知識があると客観的な証明も可能です。現在は誕生したばかりの資格ですが、これからドローンの操縦士には国家資格の取得を義務づける企業も増えてくることでしょう。
無人航空機操縦士の資格は16歳以上なら取得できるので、学生のうちに取得して就職の武器とすることもできます。
ドローンの操縦技術や知識に関する資格は国家資格よりも民間資格のほうが豊富で歴史もあります。民間資格の中には、国土交通省と提携して設立されて資格もあり、資格を活かして仕事をしている方も多いでしょう。
国家資格ができたことで、民間資格が意味のないものになるのでは、と不安を感じている方もいるかもしれません。ここでは、ドローンに関する民間資格の種類やメリットを紹介します。
2023年5月現在、ドローンの操縦技術に関する民間資格には以下のようなものがあります。
資格名 | 主催・内容 |
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IAU認定資格 | 一般社団法人 国際無人航空機協議会(IAU) が発行 最短2日で資格取得が可能 |
DJI CAMPスペシャリスト | DJI JAPAN 株式会社が主催 DJIのマルチコプターを、正しくより安全に使用できる操縦者を認定する企業向けプログラム DJI製の機体を所有し、10時間以上の飛行経験がある方向けの資格 |
JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会) | JUIDAが定める科目を修了した操縦士が申請手続きを行うことで「無人航空機操縦技能証明証」を交付している 初心者でも取得しやすい 交付まで3~4日かかる 全国にスクールがある |
DPA(一般社団法人ドローン操縦士協会) | 「ドローン操縦士回転翼3級」「ドローン操縦士回転翼3級 インストラクター」という2種類の資格が取得できる 国土交通省と連携してカリキュラムを作成 有資格者は飛行申請も簡略化することも可能 |
どの民間資格も、一定の飛行技術を客観的に証明してくれるので、取得しておくと仕事などに役立ちます。
取得費用は資格によって異なりますが、おおよそ20万~30万円が相場です。普通自動車免許を取得するのと同じぐらいの費用ですね。
また、取得までのカリキュラムは2日~5日くらいまでです。比較的短期での取得が可能なので、働きながら取得もできるでしょう。
国土交通省は、国家資格ができても一定期間は民間資格と両立していくと明言しています。ですので、国家資格ができたからといって民間資格が無駄になることはありません。
また、民間資格は取得するまでに技術習得のための講習があります。総重量100g以上のドローンを安全に飛ばして撮影や物資の運搬を行うには、一定の技術が必要です。民間資格を取得するためにスクールへ通えば、初心者でもしっかりと操縦技術を身に着けられるでしょう。
このほか、国家資格の無人航空機操縦士を取得するための試験も、実技試験を講習なしにチャレンジできます。資格によっては登録講習を受講したとみなされるものもあるので、国家試験を短時間で取得できます。
ドローンを安全に飛ばすには民間資格・国家資格を取得する以外にも、決まりごとがあります。
ここでは、ドローンを安全に飛行させるために国土交通省が定めている決まりごとや、ドローンのを飛行させる際に守らなければならない法律を紹介します。
2022年6月より、総重量100g以上のドローンは航空法の規制対象となり、登録制度が始まりました。
現在は、無登録で総重量100g以上あるドローンを飛行させると罰則の対象になります。100g以上のドローンを飛行させる場合は、機体に登録番号を表記し、リモートIDの機能を搭載しておかねばなりません。
なお、機体の安全性が確保できなかったり遠隔操作による操縦が困難なドローンは登録できないので注意しましょう。また、登録には一機体につき、990円~2,400円の登録料が必要です。
登録はドローン情報基盤システム2.0への申請すれば、そこから一括で行えます。登録の有効期間は3年間で、更新が必要です。自動車の車検と同じようなシステムだと考えましょう。登録に関する詳しいパンフレットも、PDF形式で配布されているので、確認してみましょう。
国家資格や民間資格をもっていても、無登録のドローンは飛ばすことはできません。※ただし、認められた地域に限り、リモートID機能の搭載を免除されます。
ドローンの飛行に関する規制は、国土交通省の該当ページに詳しくまとめられています。
現在、ドローンは民間資格及び国家資格がなくても操縦は可能ですが、ドローンを自由に飛ばせる地区は限られています。
特に東京や大阪などの都市部は、ほぼ住宅地の上空を飛ばせないと考えましょう。
また、ドローンは航空法のほか、以下のような法律の規制を受けます。
この法律に厳密に従うと、広い公園や河川敷、森林であっても許可なくしてドローンを飛ばすことはほぼできません。
ドローンを安全かつルールに沿って飛ばすには、まず、登録した機体を準備しましょう。
総重量100g以上のドローンを飛ばすなら、無登録の機体はNGです。
天候が悪くなってきたり、イベントが始まるなどして人が集まってきたりしたら速やかに撤収しましょう。
また、夜間の飛行はエリア1であっても原則できません。ドローンの操縦技術を磨くために練習をしたい場合は、屋内の練習場がおすすめです。
屋内ならば、航空法をはじめとする法律の規制を受けません。いつでも自由にドローンを飛ばせます。
このほか、ドローンスクールでは屋外の練習場を設けているところもあります。ドローンスクールに通えば、屋外でドローン飛行の練習ができるというメリットもあるので、操縦技術を学びたい方は通学も視野に入れて考えましょう。
ドローンの国家資格は、まだ運用が始まったばかりです。そのため、現在はドローンの操縦技術を学び、技術を客観的に証明するならば民間資格でもかまいません。
いちから操縦技術を身につけたければ、ドローンスクールに相談しましょう。民間の資格取得でも費用の無駄にならず、国家資格取得にも有利に働きます。