「空の産業革命」と呼ばれるドローンは、農業の現場でも急速に普及が進んでいます。なかでも注目されているのが『ドローン防除』です。
従来は10aあたり約1時間かかっていた農薬散布が、ドローンなら約1分で完了します。高齢化や担い手不足に悩む日本の農業を支える技術として、水稲を中心に導入が広がっています。
この記事では、ドローン防除の仕組みと可能性、普及に向けた課題から、ドローン防除に適した作物、おすすめの機体3機種までをまとめて解説します。
「防除の負担を減らしたい」「ドローンの導入を検討している」という方は、ぜひ最後までお読みください。

農業用語の「防除」とは、害虫や病害の予防および駆除のことです。
具体的には、農作物栽培時に発生する害虫や病気を予防したり、既に発生している害虫を駆除したりすることです。
「防除」は「駆除」ではありません。
「防除」には「予防」の観点が入っています。
ゆえに、発生した害虫を排除する「駆除」とは意味が違うのです。
防除には、農薬を使う化学的防除のほか、輪作や抵抗性品種を使う耕種的防除、天敵を使う生物的防除などがあります。ドローン防除は、このうち農薬散布(化学的防除)をドローンで行うものを指します。
農作物ごとに害虫の特性は異なるので、それぞれにあった農薬を使用します。
農業において、防除はとても重要な作業です。
害虫駆除を怠った場合、害虫は農作物を食い散らかしたり、病気に感染させたりします。
それが原因で農作物を出荷できない場合もあります。 ゆえに、防除はとても重要な作業なのです。

この20年で、農業従事者の高齢化は一段と進みました。
日本では従来、水稲を中心に産業用無人ヘリコプターによる空中散布が行われてきましたが、機体価格1,000万円前後と高額のため、個人農家が導入するのは現実的ではありませんでした。
また無人ヘリが入れない狭い圃場や中山間地では、動力噴霧器などによる手作業の防除が中心で、高齢の農業従事者には大きな負担になっていました。
その点、ドローンは無人ヘリより大幅に安価かつコンパクトで、日本の小規模・中山間の圃場でも導入しやすい点が強みになります。
日本の農家はアメリカとは違います。
大半が小規模農家です。
アメリカのような広大な農地であれば、ヘリコプターでの農薬散布といったダイナミックな方法もあります。
しかし、そのような手法は小規模農家では不可能です。
これまでの防除は手作業でした。
アメリカほどの広大な農地ではないにせよ、手作業での防除は重労働です。
高齢の農業従事者にはとても負担のかかる作業でした。
そのような高齢化した小規模農家の負担をドローン防除は軽減してくれます。
これからの農業をドローン防除が支えるのは間違いありません。
しかし、課題もあります。現在、ドローン防除の大半は水稲です。
その理由は規制です。
2019年まで、ドローン防除で使用できる農薬は限定されていました。
ゆえに、水稲以外の品目ではドローン防除ができませんでした。
2019年3月、農林水産省は『農業用ドローン普及計画』を策定し、ドローンで使用できる農薬を2022年度末までに200剤増やす目標を掲げました。さらに同年7月には従来の『空中散布における無人航空機利用技術指導指針』が廃止され、新たな安全ガイドラインに移行。これにより事前の機体認定やオペレーター認定といった手続きの負担が軽減され、ドローン防除の普及が加速しました。
しかし、規制が尾を引いて水稲以外でのドローン防除の普及は道半ばです。
地道な取り組みでドローン防除を増やしていくこと、それがこれからの課題です。
ここでは、ドローン防除に適した作物を紹介します。
大麦・小麦はドローン防除可能な作物です。
大麦・小麦の共通害虫「アブラムシ」に効果のある農薬はドローン防除登録農薬です。
さらに、害虫だけでなく「うどんこ病」「赤かび病」「雪腐小粒菌核病」などにも効果のある農薬が散布できます。
ドローン防除が可能な大豆の害虫は主に5種類です。
また、「紫斑病」という病気があります。
大豆はドローン防除に対応する農薬が豊富です。
ゆえに適切な害虫駆除ができます。
ドローン防除可能な玉ねぎの害虫は3種類です。
また、「灰色かび病」「灰色腐敗病」「菌核病」の予防も可能です。
キャベツの主な害虫は「アブラムシ」と「コナガ」です。
現時点ではドローン防除可能な害虫は「コナガ」のみとなります。
理由はキャベツが葉もの類のためです。
生で食べる葉もの類は高濃度農薬の散布が厳しいのです。
ゆえに、「アブラムシ」の防除は別の方法を取らなければなりません。
ドローン防除が可能なトウモロコシの害虫は「アブラムシ類」です。
現時点で、ドローン防除で使用できる農薬は2種類です。
どちらもアブラムシ類に効果を発揮します。
大根に使用できるドローン防除可能農薬は「ノーモルト乳剤」です。
これは「コナガ」の防除に効果的です。

ここからは、ドローン防除におすすめの機体を紹介します。
取り上げるのは、国産の産業用ドローンメーカーである株式会社マゼックス(mazex)の農業用ドローン「飛助(とびすけ)」シリーズです。
マゼックスは農林水産航空協会の認定メーカーで、開発から組み立てまでを国内で行っており、日本の圃場に合わせた散布性能に定評があります。
現行のラインアップは、タンク容量の大きい順に「飛助15」「飛助10」「飛助mini」の3機種です。圃場の広さや作物、予算によって適した機体が変わるため、まずは3機種の違いを比較表で確認しましょう。
| 機種 | 積載量 | 希望小売価格(税込) | 散布幅 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 飛助15 | 液剤15L/粒剤15kg | 1,320,000円〜 | 6m | 完全自動飛行対応のフラッグシップ機 |
| 飛助10 | 液剤10L/粒剤10kg | 1,097,800円〜 | 6m | マニュアル操作中心で扱いやすいスタンダード機 |
| 飛助mini | 液剤7L/粒剤7kg | 990,000円〜 | 4m | 軽量・低価格で中山間地向け |
※いずれも機体本体の価格で、別途バッテリー・充電器の購入が必要です。

飛助15は、飛助シリーズのフラッグシップにあたる15Lタンク搭載モデルです。
従来の散布方法では10aあたり約1時間かかっていた作業を約1分で散布でき、圃場面積に応じた薬剤量を積載することで1つのバッテリーで最大12L=1.5haの散布が可能になりました。
大きな4枚プロペラで降下気流の中に薬剤を留め、進行方向に応じて前後の吐出ノズルが自動で切り替わることで、作物の葉裏や根元まで均一に散布できる特許技術を搭載しており、無人ヘリコプターと同等の散布性能をうたっています。
操作面では、シリーズ初のスマート送信機に対応し、アプリの地図上で散布エリアを指定すると飛行経路が自動算出される完全自動飛行モードを搭載しています。
さらに、これまではオプション扱いだった高度維持・障害物レーダーとカメラも標準装備になりました。広めの圃場で本格的に防除を効率化したい方や、自動飛行で作業を省力化したい方に適した1台です。
| 飛助15 主要スペック | |
|---|---|
| 希望小売価格 | 1,200,000円〜(税込1,320,000円〜) |
| 積載量 | 液剤15L/粒剤15kg(粒剤散布装置はオプション) |
| 散布幅 | 6m |
| 散布目安 | 10aあたり約1分/1バッテリーで最大1.5ha(12L) |
| 機体重量 | 22.50kg(バッテリー含む) |
| 展開サイズ | 1280×1280×690mm |
| バッテリー | 12S 22000mAh |
| 防水性能 | IPX4相当 |
| 主な機能 | 完全自動飛行(地図領域指定)/AB自動飛行/直進アシスト/高度維持・障害物レーダー、カメラ標準装備 |

飛助10は、ベストセラー機だった飛助DXの後継にあたる10Lタンクのスタンダードモデルです。2025年5月に発表された機体で、自動航行やデータ活用に注目が集まる中でも「使い勝手の良さ」と「確かな散布能力」を追求して開発され、フタバ製の送信機によるマニュアル操作を基本とした直感的な設計が特徴です。
水稲や野菜、果樹などさまざまな作物に対応し、IPX4相当の防水設計により農薬散布後は機体を水洗いできるため、日々のメンテナンスも簡単です。散布システムには飛助15と同じ4枚プロペラ×前後自動切り替えノズルの特許技術を搭載しています。
操作を支援する機能として、ボタンひとつで散布ライン間を移動できる「6m自動移動機能」、2地点間を自動往復散布する「AB自動飛行モード」、棚田などの傾斜地で役立つ高度維持レーダーを備えています。完全自動飛行までは必要ないものの、確かな散布性能と扱いやすさを両立したい方に向いた機体です。
| 飛助10 主要スペック | |
|---|---|
| 希望小売価格 | 998,000円〜(税込1,097,800円〜) |
| 積載量 | 液剤10L/粒剤10kg(粒剤散布装置はオプション) |
| 散布幅 | 6m |
| 散布目安 | 10aあたり約1分 |
| 機体重量 | 21.67kg(バッテリー含む) |
| 展開サイズ | 1280×1280×540mm |
| バッテリー | 12S 16000mAh(スマートバッテリー対応) |
| 防水性能 | IPX4相当(散布後の水洗い可) |
| 主な機能 | AB自動飛行/直進アシスト/6m自動移動機能/高度維持レーダー |

飛助miniは、中山間地や小規模圃場向けに開発された7Lタンクの小型モデルです。
「農業用ドローンは大規模圃場の機械」「小型機では容量不足」という常識を覆すべく誕生した機体で、多種多様な作物を生産する中山間地で活躍できる低価格・低燃費が持ち味です。
日本の無人航空機用農薬は8倍希釈の高濃度で使用するため、7Lの容量でも1フライトで最大87.5aまで散布可能。フレームを一般的なX型ではなく十字型にすることで、小型機でも十分なダウンウォッシュを確保し、横風に強くドリフトを低減しています。
そして最大の魅力が取り回しの良さで、4本のアームとプロペラはすべて折りたたむことができ、助手席にも置けるほど小さく、8.6kgと軽いので女性でも簡単に持ち運びができます。棚田や狭小な圃場が中心の方、初めての1台としてコストを抑えたい方におすすめの機体です。
| 飛助mini 主要スペック | |
|---|---|
| 希望小売価格 | 900,000円〜(税込990,000円〜) |
| 積載量 | 液剤7L/粒剤7kg |
| 散布幅 | 4m |
| 散布目安 | 1フライトで最大87.5a(8倍希釈時) |
| 機体総重量 | 8.9kg(液剤装置・バッテリー含む) |
| 展開サイズ | 990×990×548mm |
| 最大ホバリング時間 | 21分 |
| 主な機能 | 直進アシスト・連動散布モード/自動飛行モード/高度レーダー(オプション) |
本記事では、ドローン防除の可能性と課題、適した作物、おすすめの機体を解説しました。
ドローン防除は、10aあたり約1分という圧倒的な作業効率で、高齢化や担い手不足が進む日本の農業を支える技術です。2019年の規制見直し以降、ドローンで使用できる登録農薬は年々拡大しており、水稲だけでなく麦や大豆、野菜へと活用の幅は着実に広がっています。
一方で、ドローンで散布できるのは対象作物・使用方法が登録された農薬に限られ、飛行にあたっては国土交通省への許可・承認申請などの手続きも必要です。これからドローン防除を始めるなら、機体選びとあわせて、操縦技術と法規制の知識を身につけておくことが欠かせません。
国家資格(無人航空機操縦者技能証明)の取得を検討している方は、国土交通省の登録講習機関であるドローンスクールで学ぶのが近道です。まずは無料説明会などで情報収集から始めてみてください。