ドローンに精通している多くの人は「ACSL」という企業名を知っているでしょう。
正式名称は「自立制御システム研究所」です。
名前のとおり、ドローンの自立制御システムに強みを持っています。
この記事では、そのACSLの詳細を解説します。
ぜひ最後まで読んでください。
出典:(C)ACSL
自立飛行時、従来のドローンは通信衛星から位置情報を受け取っています。
そして、そのGPS位置センサーをもとに飛行経路や飛行姿勢の制御をおこなうのです。
ゆえに、衛星からの通信が途絶えてしまうと飛行できなくなります。
しかし、ACSL製ドローンは通信が途絶えてもそのまま飛行可能です。
その理由はGPUにあります。
GPUはドローンやパソコンなどの精密機械における脳にあたる部分です。
前述した従来のドローンはCPUを使用しています。
CPUは小脳レベルです。
ゆえに、通信衛星という司令塔からの信号が途絶えると動けなくなります。
対して、GPUは大脳に当たります。
通信衛星の信号がなくとも機体そのものが信号を出して姿勢制御をおこなってくれるのです。
これは従来のドローンの弱点を補ってくれます。
悪天候や通信障害で通信が途絶えても、ドローンが自力で目的地までたどり着いてくれます。
因みに、ACSLに使用されているGPUは世界的な半導体メーカー「NVIDIA」製です。
「NVIDIA」のGPUはドローン以外にも幅広く使用されています。
具体的には、世界規模で進んでいる自動車の自動運転や人工知能分野です。
創業当時からACSLは将来有望なスタートアップ企業でした。
多くの企業から出資を受けて2018年に東証マザーズ(現グロース)に上場しました。
ACSLは2018年に社会実装実験をおこないました。
その内容は世界初の目視外レベル3飛行でした。
レベル3飛行とは、ドローンが補助者なしで目視外飛行をおこなうことです。
出典:(C) ACSL
2024年からさまざま産業で時間外労働が厳しく規制されます。
郵送や物流も例外ではありません。
人手が足りなくなって配達制度が維持できなくなる可能性があります。
ゆえに、ドローンへの期待は大きいのです。
ACSLは産業インフラの点検でも貢献します。
従来のドローンはプラント内を飛行して撮影するだけでした。
撮影以降の点検をしたり、部品交換の有無を判定したりする作業は人間がおこなっていました。
従来のドローンに対してACSL製ドローンは人の手を煩わせません。
AIによる画像解析を用いて劣化損傷状況を自動検知してくれます。
ACSLは防災や災害でも力を発揮します。
災害用のドローンは純国産フライトコントローラを搭載しています。
他にも以下の機能を搭載しています
これらの機能を用いて災害時に活動します。
また、独自の自立制御システムが能力を発揮します。
災害時に通信網が遮断されてGPS機能が使用できない場合でも、ACSL製ドローンは目的地まで自動飛行してくれます。
出典:(C)ACSL
「SOTEN(蒼天)」はACSLが開発した小型空撮ドローンです。
2021年末から販売を開始し、警察庁や消防庁など官公庁のほか、民間企業からも購入されています。
ドローンはdjiなどの中国メーカーが市場を席巻しています。
しかし、昨今は安全保障上の問題から国産ドローンの需要が高まっています。
「蒼天」は高性能・高セキュリティな小型ドローンです。
ISO15408(コンピュータセキュリティのための国際規格)に基づくセキュリティ対策を施し、データ漏洩や抜き取りの防止、機体の乗っ取りへの対策もおこなっています。
ゆえに、蒼天を含めた国産ドローンの需要はますます増えるでしょう。
エアロネクストは物流分野に力を入れているスタートアップです。
エアロネクストの強みは独自のドローン構造設計技術「4DGRAVITY」です。
この「4DGRAVITY」を搭載した産業用ドローン開発でACSLと業務提携しています。
また、ACSLとエアロネクストは物流専用ドローン「AirTruck」を共同で開発しました。
因みに、「AirTruck」は国産初の量産型物流専用ドローンです。
2021年6月15日、ACSLと日本郵政グループは業務提携契約を結びました。
2021年5月、日本郵政グループは中期経営計画「JP ビジョン2025」を発表しました。
この計画では、顧客と地域を支える「共創プラットフォーム」構想を掲げています。
この構想にACSL製ドローンが不可欠なのです。
ACSにLはドローンメーカーとしての圧倒的な技術・運航ノウハウがあります。
日本郵便の郵便局・物流ネットワークとかけ合わせれば相乗効果が生まれます。
この提携を契機にACSLと日本郵政グループはドローン配送の実用化を推進しています。
セイノーホールディングスとは直接的な業務提携はありません。
しかし、セイノーホールディングスはエアロネクストと業務提携をおこなっています。
ゆえに、間接的には提携をおこなっています。
SkyHubとは、既存物流とドローン物流を融合させることです。
これは地上と空のインフラを接続させて「いつでもどこでもモノが届く」新しいスマート物流です。
エアロネクストとセイノーホールディングスは山梨県小菅村での社会実装実験で提携しています。
アイ・イートは宇都宮大学発のロボット関連スタートアップ企業です。
事業内容は主に農業支援地上走行ロボットの開発です。
アイ・イートは優れた自律移動技術や人追従技術を保有しています。
2016年の第7回ロボット大賞では、その技術力が評価されました。
アイ・イートが開発した自走式のイチゴ収穫ロボットが文部科学省大臣賞を受賞したのです。
しかし、アイ・イートが開発しているのは地上走行型ロボットです。
「ドローン専業スタートアップのACSLは畑違いではないの?」
そのような声が聞こえてきます。
けっして畑違いではありません
アイ・イートは「開発する地上走行ロボットにACSLの自律制御システムが役立つ」と考えています。
対するACSLも「優れた自律制御システムをドローン産業以外にも展開していきたい」と考えています。
2社の利害は一致しています。
前述したようにACSLの自立制御システムは他社にはない魅力があります。
ゆえにドローンに限らず、これからは多くの産業で需要があるでしょう。
この記事ではACSLをとりあげました。
ACSLはさまざまな産業での活躍が期待されています。
とくに、2024年問題におけるトラックドライバーの人材不足は深刻です。
ACSLがそれを解決してくれる一助になることを願います。
最後まで読んでくれてありがとうございます。