ドローンの活用が広がるなか、2022年12月にドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)制度が施行され、安全運航の基盤となる制度ができました。
この制度の導入により、ドローン操縦には国家資格が必要となり、取得や更新には一定の基準が設けられたことで安全運用が広がってきています。
国家資格の有効期間は3年間とされており、定期的な更新が義務づけられました。
更新を怠れば、業務での飛行は認められず、失効後の再取得には手間とコストがかかります。
また、更新時には講習の受講や身体適性の確認といった条件が設定されています。
それに加えて、申請のタイミングや証明書の発行時期にも注意が必要です。
そこでこの記事では、国家資格の更新制度の全体像と、実際の講習内容や申請の流れを詳しく解説していきます。
2022年12月からスタートした無人航空機操縦者技能証明制度により、ドローンの国家資格が正式に導入されました。
この制度のもとで取得した資格には、有効期間が設けられています。
これは、技能と知識の維持を図るとともに、安全な運航を継続して行うことを目的としています。
有効期限を過ぎると、再び講習を受け直す必要が生じ、業務に支障をきたす恐れがあるので注意が必要です。
定められた期間内に資格を「更新」することが非常に重要です。
(技能証明の有効期間)
第百三十二条の五十一 技能証明の有効期間は、三年とする。
2 前項の有効期間は、その満了の際、申請により更新することができる。
3 国土交通大臣は、前項の規定による技能証明の有効期間の更新の申請があつた場合には、その者が国土交通省令で定める身体適性に関する基準を満たし、かつ、その資格に応じ無人航空機を飛行させるのに必要な事項に関する最新の知識及び能力を習得させるための講習(第百三十二条の八十二及び第百三十二条の八十三において「無人航空機更新講習」という。)であつて第百三十二条の八十二の規定により国土交通大臣の登録を受けた者(第百三十二条の八十三、第百三十二条の八十四第一項及び第百三十四条第一項第十九号において「登録更新講習機関」という。)が実施するものを修了したと認めるときでなければ、技能証明の有効期間の更新をしてはならない。
ドローン国家資格の有効期間は、原則として「発行日から3年間」と定められています。
この期限を過ぎてしまうと、更新申請は受けられなくなります。
更新を希望する場合、有効期限が切れる前に、更新講習と手続きを完了させなければなりません。
「更新講習」は、国が認定した講習機関で受ける必要があり、一定の学科と実地の確認が行われます。
更新手続きは、有効期間が満了する6か月前からできるとされています。
国土交通省の公式資料では、講習は申請から3か月前に修了した講習まで有効なため、有効期間の満了日の9か月前から更新講習が受講可能と記されています。
講習は予約がとりにくい状況の場合もあり、余裕をもったスケジュール管理が必要です。
万が一、更新期限をすぎてしまった場合、資格は失効扱いとなります。
その場合、再度試験からやり直す必要があり、時間も費用もかかるためくれぐれも注意しましょう。
資格の失効は、仕事上にも影響を与える可能性もあります。
事前の情報確認と計画的な行動で余裕をもって準備を進めて、更新をスムーズに行いましょう。
国家資格の更新に関して夜間飛行や目視外飛行の限定解除を取得している場合、基本資格(二等/一等)の講習に含まれるので別途講習を受けずに更新可能です。
また、技能証明の更新手続きは、有効期限の6か月前から、ドローン情報基盤システム(DIPS)2.0を通じて申請することが可能です。
なお、更新に必要な講習は、更新申請の3か月前までに修了している必要があるため、有効期限の9か月前から受講できます。
ドローン国家資格の更新申請を提出した後も、注意すべき点があります。
更新申請後、すぐに新しい技能証明書が手元に届くわけではありません。
発行までには一定の期間を要し、その間に旧証明書の有効期限が切れてしまう可能性があります。
旧証明書の有効期限が切れていると、資格が一時的に無効扱いとなるため注意が必要です。
航空法では、技能証明を所持している人が特定飛行を行う際には、その証明書を携帯する義務があると規定されています。
(技能証明書の携帯義務)
技能証明を受けた者は、第百三十二条の八十七に規定する特定飛行を行う場合には、技能証明書を携帯しなければならない。
新しい技能証明書が届く前にどうしてもドローンを特定飛行させる場合、救済処置として、旧証明書と更新の申請後に送られてくる更新完了通知メールを携帯しておくことでドローンの操縦は可能です。
ただし、仕事への影響を最小限に抑えるためにも、計画的な申請が重要です。
申請情報のミスも、遅れの原因になり得るので申請前後で情報の正確性を確認しておく必要があります。
更新申請後も気を抜かず、受け取り完了までしっかりと準備を整えておきましょう。
ドローン国家資格(技能証明)の更新では、DIPS(ドローン情報基盤システム)2.0での更新申請の前に、下記2点が必要です。
・病院などの医療機関か登録更新講習機関での身体適性検査の受検
・登録更新講習機関での更新講習の受講
それではここから、1つずつ詳しく解説します。
まずは身体適性検査について解説していきます。
ドローン国家資格の更新にあたっては、技能や知識の確認だけでなく、身体的な適性も審査対象となります。
これは、無人航空機を安全に運航するために、一定の身体条件が維持されているかどうかを確認することが目的です。
身体適性検査については、下記2種の対応に分けられます。
①自動車免許証を所持する場合は身体適性検査が不要
自動車免許を所持している場合、DIPS2.0に免許証の写しを登録することで、身体適性検査を受けたとみなされるので検査は不要です。
②病院などの医療機関か登録更新講習機関での身体適性検査の受検
自動車免許を所持していない場合・一等資格25kg以上限定解除を取得している場合は、身体適性検査が必要です。
登録更新講習機関や医療機関は混雑も予想されるので、自身がどちらの対応に当てはまるのか確認して計画的に動くとスムーズに進められるでしょう。
ドローンの国家資格を更新するには、「更新講習」の受講が欠かせません。
この講習は、操縦技術や知識の最新状態を維持し、引き続き安全な飛行が行えるかを確認するために設けられています。
講習の内容は、大きく分けて「学科」と「実地」の2種類です。
基本的な更新であれば学科のみが対象となりますが、過去に技能証明の停止処分を受けている場合は、学科に加えて実地の受講が求められます。
自分がどの講習を受ける対象かどうかは、DIPS2.0から届くメールに記載されており、そこで確認可能です。
講習内容は資格区分によっても異なり、一等資格と二等資格では所要時間も変わってきます。
たとえば、停止処分のない通常の更新では、一等が学科75分、二等が学科50分となっています。
過去に処分歴のある場合には、一等で学科105分と実地15分、二等では学科50分と実地11分の講習が必要です。
ここからはまず、学科講習内容を解説していきます。
学科講習では次のような内容が扱われます。
講習では、基本的には国土交通省が作成した教材を使用し、内容が大きく変わらなければ各登録更新講習機関のオリジナル教材を使用することもあります。
オンライン講習での受講が可能な登録更新講習機関もあります。
オンラインで学科講習を受ける場合は、最後に効果測定のための「修了演習」を受けなければなりません。
修了演習は、試験ではなく理解度を測る確認作業で、下記のような内容で行います。
ドローン国家資格の更新時、実地講習が必要かどうかは、過去の処分歴や講習の種類によって異なります。
違反歴がない場合や、第1号(精神的な病気)・第2号(身体の障害に関する事項)に該当するやむを得ない停止処分を受けた人は、原則として学科講習のみで済みます。
一方で、第3号(中毒者)・第4号(違反事項)・第5号(非行や重大な過失)に該当する停止処分や失効理由がある場合は、実地講習が必要になります。
これには、操縦技量の再確認と再習得を促す目的があります。
実際の機体やシミュレーターを使って、操縦技能を現場で再チェックする講習です。
実地講習の内容は、初回取得時の実地試験の科目をベースに設計されています。
講習時間はおおよそ10〜20分とされ、短時間ながら密度の高い訓練です。
シミュレーターが使われる場合もありますが、通常の講習機関で使われる簡易的なものは使用できません。
より現実に近い操作環境が再現できるシミュレーターの使用が義務付けられています。
その仕様は国土交通省の告示およびガイドラインで定められており、専用の基準に準拠していなければなりません。
このように、更新講習や失効再交付講習における実地講習は、単なる確認ではなく「最新状態の操縦能力」を補う役割を果たしています。
該当する人は、事前に通知される条件を確認し、十分な準備を整えて臨むことが求められます。
上記で述べてきたように、ドローンの国家資格には有効期限が設定されており、原則として3年ごとに更新手続きを行わなければなりません。
これは操縦者の技能や知識の維持、安全な飛行環境の確保を目的とした、法律で定められた重要なプロセスです。
更新を怠ると、資格が自動的に失効扱いとなり、業務での飛行が認められなくなる可能性があります。
さらに、有効期限を過ぎてしまった場合には、再度試験や講習を受け直す必要が生じ、手間や費用の負担も無視できません。
こうしたリスクを避けるためにも、期限が近づいた段階で余裕をもって講習の受講や申請手続きを進めることが大切です。
また、更新申請を済ませた後も、新たな技能証明書がすぐに発行されるわけではありません。
証明書が手元に届くまでの期間中に有効期限を迎えると、資格が一時的に無効とみなされる場合もあります。
制度の詳細を事前にしっかりと確認し、確実に更新を完了させることが、安全で安定したドローン運用の第一歩となります。