近年、産業分野でのドローン活用が急速に広がっています。
建設現場で欠かせない測量業務も、ドローン活用が進む分野の一つです。
従来の測量方法と比べ、短時間で広範囲のデータを取得できるため、土木・建設業界を中心に多くの現場で導入が進んでいます。
標定点(GCP)を用いることで、高精度な測量が可能になり、地形や構造物の詳細な三次元データを取得できます。
業務の効率化やコスト削減を実現するドローン測量は、今後の建設分野の発展に不可欠です。
本記事では、ドローン測量の具体的な費用、方法、必要な資格について詳しく解説します。
ドローン測量とは、ドローンに搭載したカメラやセンサーで上空から地表を撮影し、地形や構造物を計測する測量方法です。
従来の『地上測量』(人が地上を歩いて実施)と、『航空測量』(航空機を使用)の中間に位置する方法です。
従来の測量方法と比べて、作業効率が向上し、コストや時間の削減が可能になりました。
ドローン測量では、『3次元点群データ』や『オルソ画像』を取得します。
『3次元点群データ』は、地表の形状を点の集合体として表したデータで、『オルソ画像』は、正確な縮尺を持つ航空写真です。
これらのデータを組み合わせることで、より正確な測量が可能になります。
ドローン測量では、光学カメラやレーザースキャナーを搭載したドローンを使用します。
測位方法には、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)などが用いられます。
RTKモジュールを搭載することで、高精度な位置情報を取得でき、より正確な測量結果を得られます。
ここではドローン測量の5つのメリットについて解説します。
1.作業時間と人員の削減
2.測量費用の抑制
3.危険な場所でも安全に測量
4.従来の方法では測量できなかった場所も測量可能
5.3Dモデルから図面や地図を自動生成
それではここから、ドローン測量の5つのメリットを1つずつ紹介・解説します。
ドローン測量は、従来の測量方法と比べて、作業時間と必要な人員を大幅に削減できるメリットがあります。
ドローンは広範囲を一定の速度で飛行するため、人が徒歩で行う地上測量と比較して、データ収集を短時間で行えます。
2ヘクタール程度の広さを測量する場合、地上測量では2~3日かかりますが、ドローン測量では1時間程度で完了する例もあり、大幅な時間短縮が可能です。
ドローン測量は、人件費や移動費などのコストを削減できるため、測量費用の削減につながります。
地上測量と比べて、作業時間が短縮される分、人件費も削減できます。
航空測量でも、条件によりますが、セスナなどで測量を実施すると100万円ほどかかるところ、ドローンなら十数万円で測量できます。
ドローンによる測量は、人が立ち入ることが困難な場所や危険な場所でも、安全に測量できるメリットがあります。
ドローンは遠隔での操作が可能なため、安全な場所から操縦できるという利点があります。
また、自動操縦により、人が立ち入れない災害現場などでも活躍します。
ドローンによる測量は、測量範囲に制限がないため、従来の方法では測量できなかった場所も測量できます。
ドローンのカメラを使い上空から測量するため、地上から徒歩で行う測量よりも広範囲での実施が可能です。
高低差のある地形など、人が立ち入りにくい場所でも、ドローンなら容易に入り込めます。
ドローンによる測量では、作成した3Dモデルから、必要な図面や地図を自動生成できるメリットがあります。
従来の地上測量では、測量後に取得したデータをもとに図面を作成するのに時間がかかっていました。
ドローンで『3次元点群データ』を収集し、専用ソフトで自動解析することで、3Dモデルを作成できます。
ここではドローン測量の4つのデメリットについて解説します。
1.天候の影響を受けやすい
2.飛行範囲が限られる
3.高低差などレーザーが届かない場所は測量方法に制限がある
4.水の影響を受けやすい
それではここから、ドローン測量の4つのデメリットを1つずつ紹介・解説します。
ドローンは雨や風の影響を受けやすく、天候によっては測量ができません。
ドローンは精密機械のため、内部に水が侵入すると故障のリスクが増します。
故障が原因で、人や建物に衝突し、事故が起きる可能性もあるため危険です。
また、風速5m/s以上の環境下では操縦が不安定になるため、砂埃が巻きあがる程度の風がある場合は飛行を中断する必要があります。
ドローンのバッテリーは容量に限りがあるため、飛行範囲が限られます。
測量用ドローンの飛行可能時間は30~40分程度です。
広範囲を測量する場合は、途中でバッテリー交換を行う必要があります。
しかし、近年、ドローンのバッテリー性能は向上しており、将来的には飛行可能時間が延びると予想されています。
高低差が大きい場所やレーザーが届きにくい場所では、測量方法に制限があります。
樹木が地表を遮る場所では、写真での測量では正確なデータを収集できないため、レーザーによる測量が用いられます。
レーザーは樹木などの間を貫通して測量できますが、高低差の大きい場所や建物がレーザー光を阻む場合、測量が困難になります。
測量する場所の地形を事前に調査し、適切な測量方法を選定することが重要です。
水面や水中の地形測量は、水質や環境評価、漁業、河川改修などに不可欠な技術ですが、従来のレーザー測量では対応できません。
ただし、グリーンレーザー測量を使用することで、水の影響を受けにくい測量が可能です。
グリーンレーザーの光は、水に吸収されにくく、水中を通り抜けられます。
水の透明度にもよりますが、地上からでも水中の3次元地形データを収集可能です。
ドローンによる測量の種類は、大きく分けて2種類があります。
ドローン写真測量
ドローンレーザー測量
それではここからドローン測量の種類を1つずつ詳しく紹介します。
ドローンによる写真測量は、ドローンに搭載された光学カメラでさまざまな角度から複数枚の写真を撮影し、つなぎ合わせて地形データを作成する方法です。
レーザー測量と比較して、低コストで実施可能ですが、光量が不足している場所や、樹木や建物などによって地表が目視できない場所では実施できません。
反対に、3Dモデルに色が必要な場合や、オルソ画像を生成する場合は写真測量の方が適しています。
ドローンによるレーザー測量は、3次元レーザースキャナーを搭載したドローンを用いて、地表までの距離を測定する方法です。
レーザー光は樹木の間をすり抜けるため、より幅広い地表データを収集できます。
グリーンレーザーと呼ばれる、水の影響を受けにくいレーザーを使用すれば、陸上から水底までを同時に測定可能です。
ただし、レーザー測量が可能な機体は特殊であるため、高価な場合が多く、コストが上がることがあります。
ここでは、ドローン測量の手順を8ステップで徹底解説します。
①現地調査
②自動操縦飛行内容の設定
③GCP(標定点)と検証点の測定/対空標識の設置
④ドローン撮影
⑤撮影データの解析・作成
⑥精度検証
⑦成果物の作成
⑧納品
それではここから、1つずつ詳しく紹介します。
まずは、測量対象エリアを事前に調査し、飛行ルートや撮影計画などを検討します。
これを『踏査』と呼びます。
調査する内容として、以下の項目が挙げられます。
次に、ドローンの機体と連携するアプリなどに、飛行経路や高度、撮影間隔など、自動操縦の設定を行います。
まず、飛行経路を設定します。
飛行区域を選ぶと自動でコースが設定されるアプリもありますが、飛行禁止区域や一般道の近くを通らないルートになっているかを確認します。
そして、飛行高度を設定します。
これは安全性やデータ精度向上のために重要な設定です。
次にラップ率を設定します。
ラップ率とは、複数枚撮影した画像が何%重なっているかを示す値で、国土地理院が作成したマニュアルによると、オーバーラップ(進行方向の重なり)80%以上、サイドラップ(進行方向の横の重なり)60%以上が良いとされています。
最後にカメラの角度と明るさの調整を行います。
カメラの角度(ジンバルピッチ)は、一般的には真下(-90°)方向で設定します。
明るさは、撮影日や地表の色、天候に合わせて調整し、鮮明に写るようにします。
次に、測量精度を確保するために、GCP(標定点)と呼ばれる基準点や検証点、対空標識を設置する必要があります。
まず、測量範囲内でGCPと検証点の配置を決めます。
GCPは、水平位置や標高を正確に測定するための基準となる点です。一方、検証点は、3次元測量データの座標が適切に取得されているかを確認するためのポイントになります。
GCPは測量エリアの外周に均等に配置し、検証点はGCPの半数以上を測量範囲内に設置します。
その後、GCPと検証点の座標を正確に測定し、対空標識を設置します。
次に、設定した飛行計画に基づいてドローンを飛行させ、上空から地表を撮影します。
より精度の高いデータを収集するために、飛行高度やカメラ角度を変えて、複数回撮影することがあります。
次に、撮影した画像データを解析し、3次元点群データやオルソ画像を作成します。
3次元点群データは、写真データを専用ソフトに取り込み、座標や位置データを統合して生成されます。
オルソ画像は、位置を変えて複数枚撮影した航空写真データをつなぎ合わせ、全体が真上から見た形になるようにひずみを補正して作成されます。
次に、作成した測量データの精度を検証します。
地形、距離、面積の数値を見て、実際の測量値と撮影データの測定値との差が少ないほど、高精度のデータになります。
精度を確認するには、GCP(標定点)を基準に測定し、検証点との誤差を測定します。
国土地理院のマニュアルによると、「三次元点群の平面位置及び高さの要求精度は、誤差が最大0.05m を超えないもの」としています。
精度検証が完了したら、測量結果をもとに、測量数値、飛行データ、図面や地図などの成果物をクライアントの希望に合わせて作成します。
現場の作業風景の写真を依頼される場合があるので、記録として撮影しておくことが重要です。
最後に、作成した成果物をクライアントに納品します。
以上、ドローンによる測量の手順の解説は終了です。
お疲れ様でした。
ドローン測量を行う際には、航空法などの法規制を遵守する必要があります。
ここではドローン測量と法規制について解説します。
・無人航空機操縦者技能証明書の取得
・航空法の遵守
・機体認証
・運航ルールの遵守
それではドローン測量と法規制について、1つずつ紹介・解説します。
無人航空機操縦者技能証明書には、一等と二等があります。
これらは国土交通省が認定する国家資格です。
一等無人航空機操縦士は、立入管理措置を講じることなく特定飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)ができる資格です。
ドローン飛行には必須の資格ではありませんが、測量の業務では特定飛行を行う場合があるため、取得しておく方がベターです。
また、資格を保有しているとクライアントからの信頼に繋がるので、ドローンパイロットとして働きたい人は、ドローンスクールなどで資格取得を目指すのがよいでしょう。
ドローンを飛ばす際には、飛行高度や飛行区域などの制限を遵守する必要があります。
ドローンの飛行ルールは、国土交通省が定める航空法によって決められています。
禁止されているエリアで許可なく飛行させるなど、違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される場合があります。
航空法のルールは随時変更されることがあるので、小まめにチェックしておくことが重要です。
ドローンを飛行させる前に、機体認証を取得する必要があります。
要約すると、特定飛行を行うドローンが安全基準に適合しているかを検査し、安全性を確保するためのものです。
機体認証は、ドローン情報基盤システムに必要事項を入力して申請することで、WEB上で完結できます。
ドローンを飛行させるときは、以下の運航ルールを遵守する必要があります。
上記のルールは飛行させる場所に関わらず、守らなければなりません。
ドローン測量士が持つべき資格は、『測量の資格』と『ドローンの資格』の2種類があります。
まず、測量業務に関する資格は、「測量士」と「測量士補」があります。
国土地理院が定めた測量法に基づく国家資格で、基本測量や公共測量に従事する際に必要です。
測量士は、測量の目的や地域、期間、方法などを定めた測量計画を作成できますが、測量士補は作成できません。
次に、ドローンに関する資格には、「無人航空機操縦士」があります。
測量士に必須の資格ではありませんが、保有することでドローンの操縦スキルや知識の証明になり、業務上の信頼性が高まります。
ドローン測量を専門業者に依頼する場合の費用相場は、写真測量で100万円から、レーザー測量で300万円からが目安となります。
ただし、測量範囲によって金額が変わるため、注意が必要です。
平地で4ヘクタールの場合、写真測量で約50万円、レーザー測量で約200万円が目安となります。
機材を揃えて自分で行う場合、ドローン本体、標定点測定機、データ解析ソフトなどを用意する必要があり、写真測量の場合は約250万円、レーザー測量は約500万円の導入コストがかかります。
加えて、ドローン操縦技術を持つ測量士が必要で、飛行エリアによっては飛行許可申請の手続きも必要となるため、専門業者に依頼した方が手間を省けます。
ここでは、ドローン測量の事例を徹底解説します。
・建設分野
・土木分野
・点検分野
それではここから、1つずつ詳しく紹介します。
建設分野では、施工前の地形測量や建設現場の進捗管理において、ドローン測量が積極的に活用されています。
建設工事を開始する前にドローンを用いた測量を行うことで、迅速かつ正確な地形データを取得し、3D地図データを作成できます。
このデータを基に施工計画を立てることで、より精密な工事計画を策定できるようになりました。
さらに、建設現場の進捗管理においても、定期的にドローン測量を実施することで、施工状況を3Dデータとして可視化し、管理者が遠隔でも進捗を確認できるようになります。
この技術の導入により、施工スケジュールの最適化が進み、工期短縮にも寄与しています。
また、掘削現場ではドローン測量を用いて土量を計測し、搬出計画を最適化する取り組みも行われています。
これにより、不要な搬出作業を削減し、コストや環境負荷の低減にもつながります。
都市部における建設現場では、高層建築の施工管理にドローン測量が導入されています。
ビル建設の際、足場の設置や組み換えの最適化にドローン測量データが活用され、安全性と作業効率の向上に貢献しています。
土木分野では、河川・堤防の点検や災害時の被災状況把握にドローン測量が活用されています。
特に、河川の堤防点検では、グリーンレーザーを搭載したドローンが使用されており、水中の地形測量も可能です。
これにより、従来の測量手法では難しかった水辺の詳細な地形データを取得できるようになりました。
さらに、土砂崩れや洪水被害の発生時には、ドローンを用いて迅速に3D地形データを取得し、復旧計画の策定に役立っています。
通常の地上測量では危険が伴う現場でも、安全かつ効率的に測量が行える点が大きなメリットです。
点検分野では、橋梁や高架道路などの点検にドローン測量が活用されています。
空撮による3Dモデリング技術を用いることで、詳細な構造の確認を可能にしました。
従来の方法では、通行規制をかけたり足場を設置したりする必要がありましたが、ドローンを活用することでそれらのコストや時間を大幅に削減しました。
特に、高所の安全点検においては、従来の作業員が危険を伴う場所に立ち入ることなく、ドローンを活用して効率的に点検できるため、作業員の安全確保やリスク管理の観点からもメリットがあります。
さらに、港湾施設や海洋構造物の維持管理にもドローン測量が導入されており、AI技術と組み合わせることで、施設の変状を自動的に検出するシステムの開発も進められています。
これにより、点検作業の効率化と精度向上を実現しました。
本記事では、ドローンを使用した測量の具体的な費用・やり方、必要な資格について詳しく解説しました。
ドローン測量は、従来の測量方法に比べて、効率的かつ高精度なデータ取得が可能な技術として、さまざまな分野で活用が広がっています。
標定点(GCP)の適切な設置やデータ解析により、より正確な測量データを得られるので、土木・建設・農業など多岐にわたる業界での業務改善に貢献しています。
ドローンを活用することで、より効率的かつ精度の高い測量を実現し、測量分野での業務最適化が実現可能です。
今後、さらなる技術革新により、測量の自動化やリアルタイム解析の精度が向上することが期待されます。