ドローンのモーターの回転数をコントロールするパーツである「ESC(Electric Speed Controller)」について解説します。
この記事ではESCの基本的な機能や特徴、選び方を解説しているので、ドローンの購入や自作などを検討している方は参考にしてみましょう。
出典:(C) ODAN
まずは、ドローンにおけるESCとは何かを解説します。
ESCはドローンの動作において重要な役割を持っているので、これからドローンを購入する方や、「ESCの名前は聞いたことがあるけど用途はよく分からない」という方は、ぜひチェックしておいてください。
ESCとは、ドローンのモーターの回転速度をコントロールする制御装置のことで、「Electric Speed Controller」の略称です。
ドローンを飛ばしているのは内蔵しているモーターの力ですが、モーターの回転数をコントロールすることによってスピートや進行方向を操作します。
ドローンには一般的に4枚のプロペラが搭載されていますが、例えば右に進みたい時は左側にプロペラを速く回し、前に進みたい時は後方のプロペラを早く回します。
このときの速度のコントロールを行っているのがESCなのです。
なお、ESCは「アンプ」と呼ばれることもあります。
ESCには主に以下の2種類があります。
ドローンにはプロペラが4つあるタイプが一般的なので、モーターも各プロペラ毎に1つずつ付いています。
各モーターごとにESCを取り付けて制御する「単体タイプ」は、1つあたりの価格は安いものの計4つ購入する必要があり、機体の重量も重くなってしまいます。
対して4in1タイプは、1つのESCで4つのモーターを制御できるため、機体が軽くなるうえに配線も少なく済むのが利点です。4in1は1点あたりの料金は高めですが、基本的には4in1の方がおすすめです。
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ESCには実際にどのような機能、役割があるのかを解説します。
ESCの機能は主に以下の通りです。
ドローンを扱ううえで、必ずしも全てを覚える必要はありません。
しかし、理想通りの操作を実現するためには押さえておきたいポイントなのでぜひチェックしておいてください。
「カットオフ機能」は、バッテリー電圧が低くなってきたときに自動的に電圧をカットしてくれる機能です。
ドローンはバッテリーで動く製品がほとんどです。バッテリー容量が減って電圧が低くなったまま飛行を続けると、バッテリーが空になった際にバッテリーがダメージを受け、パワーが落ちて十分な飛行ができなくなるなどの弊害が出てしまいます。
バッテリーへのダメージを防ぐための機能がこの「カットオフ機能」で、ESCの基本的な機能の一つです。
「BEC出力」とは「Battery Eliminator Circuit」のことで、一つのバッテリーから複数の部品へ電力を供給できる機能のことです。
ドローンには受信機やサーボといった、電力を必要とする部品がいくつも搭載されています。本来であればそれぞれにバッテリーを用意しなければなりませんが、BEC機能があれば一つのバッテリーで他の部品の電力をまかなえます。
搭載するバッテリーの数が減ればその分軽量化に繋がり、配線が複雑化するのを防ぐメリットがあります。ただし、消費電力の大きな高性能なパーツを搭載している場合は、大きな電力を出力できるESCを選ぶようにしましょう。
「スタートパワー」とは、モーターの立ち上がりの回転数を調整する機能のことです。電力が供給されたモーターは回転数を上げようとしますが、いきなり最大の回転数を叩き出すとギアが欠けるなどのダメージを受ける可能性があります。
そこで、「スタートパワー」機能によって立ち上がりの回転数を制御し、自動的にソフトな回転数でモーターを動かし始めるように調整してくれるのです。
「進角制御」とは、モーターのトルクを制御して性能を引き出すことです。トルクとはモーターのシャフトを回したり、止めたりする力のことで、負荷をかけ過ぎると発熱などの危険もあり、うまく制御する必要があります。
ESCはこの「進角制御」を行うことで、モーターのトルクを最大限引き出せるように制御してくれます。
「アクセラレーション」は、プロポ(コントローラー)でスロットルを開いたときの、モーターのレスポンス速度を制御する機能です。スロットルとは、ドローンの上昇・下降の操作を指します。
大きなプロペラを回したいときは、反応速度を悪くします。回したいプロペラの大きさによって、調整を行うのが一般的です。
「ブレーキタイプ」は、スロットルを下げたときにモーターの回転を素早く止めるか、徐々に止めるかを設定する機能のことです。エアブレーキを効かせたいときはあえて徐々に停止する設定にするなど、ドローンを理想通りに動かす際に活用します。
「ガバナー」は、モーターの回転数を一定に保つように制御する機能のことです。モーターの回転数は風向きなどの天候によっても大きく左右されるので、モーターにかかる負荷が強い場合は電流を強くし、低い時は弱くするなどの調整を自動で行ってくれます。
「クーリング」機能は、ESCの熱を逃がす機能のことです。ESCには常に電流が流れ、強い熱を持つことがあります。熱が溜まるとパフォーマンスが落ちるだけでなく、周辺のパーツにダメージを与えることもあります。
そこで、ESCが過剰に熱くならないよう制御する機能が搭載されているのです。
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ドローンのESCの選び方を解説します。
ESCをカスタマイズする場合は、以下のような項目を意識して選んでみてください。
基本的には、ESCは一般的な既製品のドローンを購入した際にははじめから搭載されています。
自身で付け替える場合の参考にしてみましょう。
必要な機能が搭載されたESCなのかをチェックしましょう。
特に、「カットオフ機能」や「クーリング機能」は、バッテリー容量が減少や熱暴走などによる急な墜落を防ぐためにも、搭載されている製品を選ぶのがおすすめです。
それ以外の機能は、理想とするドローンの操縦に合わせて選択するようにしてください。
ESCの最大出力値は、モーターの性能に見合ったものを選ぶと良いでしょう。モーターのパワーがあっても、ESCの出力値が低いと性能を最大限まで引き出せません。
「最大連続電流」などと表記されていることもあり、一般的には30A~50Aくらいが目安となります。大出力のモーターを動かす場合は、100Aなどの出力が大きいESCを選ぶのがおすすめです。
モーターにはブラシモーターとブラシレスモーターの2種類がありますが、ドローンでは一般的にブラシレスモーターを使うことが多いです。
見分け方は以下の通りです。
合わないものを選んでしまうとモーターが動かないため、購入前には必ず確認しておきましょう。
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この記事では、ドローンのESCについて解説しました。モーターの回転数を制御するESCは、ドローンを思い通りに操縦するための重要なパーツです。
基本的にはドローンにはじめから搭載されていますが、自作する場合やカスタマニズする場合には自身で選ぶことになります。どんなESCを選んだらいいか分からない方は、本記事の内容をぜひ参考にしてみてください。