ドローン技術の最前線、中国。2023年に起こった重大な変革が、世界のドローン業界にどのような影響を与えているのでしょうか?
中国のドローンメーカーは、世界シェアの7割から8割も占めているのです。
本記事では、世界市場をリードする中国のドローンメーカー「DJI」を中心に、輸出規制の動向や軍事利用の現状について深掘りしていきます。
中国ドローン業界の最新情報を、詳細に解説していきますので、ぜひご覧ください。
出典:UnsplashのChristian Lueが撮影した写真
中国とドローンの関係について、何を思い浮かべるでしょうか。
2022年には、ドローンを使用した北京オリンピックのショーがありました。
夜空に表現されたオリンピックのマスコットなどは、圧巻でした。
使用された520機のドローンを衝突させることなく、飛行させる技術はすごいです。
また、中国はドローンの制作や販売がとてもさかんです。
中国のDJIは世界3大ドローンメーカーの1つで、あらゆるドローン関連事業を行っています。
有名なドローンメーカー「DJI」は、中国のメーカーなのです。
中国の深圳(しんせん)が、DJIの本拠地となります。
その中国で2023年9月、変革がおきます。
その変革とは、ドローンの輸出規制なのです。
2023年、中国のドローン界に変革が起きました。
中国ドローンの輸出規制です。
輸出規制とは、世界の国々の安全を考慮して、紛争時に武器や軍事に転用されそうな技術などが、兵器を開発している国・集団に渡らないようにするためのものです。 具体的な中国の輸出規制は、JETRO(日本貿易振興機構)の輸出規制リストに掲載されています。軍事関係の物・技術以外にも、偽造通貨や各種毒薬・中国の政治・経済・文化などに危害を与えるものとなっています。 |
中国ドローン輸出規制は、最新のドローン技術が紛争時に使用される武器や軍事品に転用されるのを防ぐためです。
事実、ドローンにはGPSやカメラなど軍事品等に使用・転用される技術がたくさん詰まっています。
中国のドローンは軍事転用の観点から、輸出規制の対象になったのです。
中国のドローンの輸出規制の対象は、軍事に転用される可能性のあるドローン技術です。
中国の軍事等に転用されるドローンの技術には、どのようなものがあるのでしょうか。
中国の輸出規制対象と解説は、以下になります。
中国の規制対象事項 | 詳細 | 軍事転用の可能性 |
連続飛行時間 | 30分以上 | 飛行時間が長く確保できる場合、敵地から離れた遠方からドローンを離発着させることが可能で作戦上有利となる。 |
離陸最大重量 | 7kg以上 | 離陸重量を大きくできる場合、飛行するための動力源の搭載を増やすことが出来るため長時間飛行が可能になり、爆弾等の武器類の搭載量を多くできる。 |
投下機能 | 投下機能の有無 | 爆弾等の武器などが、投下可能になる。 |
レーダー | 高性能レーダー | GPS機能の位置決定システムや実際の飛行空域の障害物回避をレーダーを使用して行い、墜落することなく敵基地内への侵入が可能になる。 |
その他のドローンの最新技術については、ドローン「LEMUR2」の記事を参考にしてください。
出典:UnsplashのGetty Imagesが撮影した写真
初期のドローンは、軍事目的で開発されました。
現在のドローンは民間用もありますが、最初は軍事目的で開発されたのです。
その歴史は古く、米軍が第2次世界大戦に爆弾を積んだドローンを開発したのが最初です。
爆弾搭載ドローンは実用には至りませんでしたが、開発は続けられていきます。
その後ドローンは標的機として開発や研究が進み、射撃訓練に用いられたのです。
1970年には偵察としてのドローン開発が盛んになり、1990年に入ると攻撃機として実用化されています。
2001年にはドローン「プレデター」からミサイルを発射して、初めて攻撃ドローンとして実践運用されるのです。
ドローン「プレデター」についてはこちらも参考にしてください。
以上のように、ドローンは戦術の形態を変えていきます。
日本においてドローンは「他国の攻撃に使用されるもの」という考えから採用開始が遅れ、2022年になってから防衛力の観点から注視されるのです。
近隣の中国では、軍事ドローンが2023年4月に台湾を1周した事実があります。
中国の軍事関係ドローンも含め、軍事ドローンのメリット・デメリットを以下にまとめます。
メリット | 解説 |
小型ドローンは、安価で大量に準備できる。 | 偵察航空機・ヘリなどと比べると費用が安く危険な任務も可能で、得られる情報量も多いため、費用対効果が大きい。 |
監視・偵察・攻撃が可能となる。 | ドローンの仕様を変えることにより、監視・偵察・攻撃ドローンに変更できる。 |
人命が直接、危険にさらされない。 | 戦闘機のようにパイロットが搭乗して敵地に向かわず、離れた場所からドローンを操縦して任務を遂行できる。 |
小型ドローンは、探知されにくい。 | 敵機侵入を探知するにはレーダーを使用しその反射波により、敵の存在を把握する。小型ドローンは小さく判別が難しいため、ステルス性能を有したドローンではさらに探知が困難になる。 |
デメリット | |
大型・高性能ドローンは高価 | 高性能ドローンになるとドローン自体とドローンを操縦するシステムが必要になり、初期投資は一時的に高くなる。 |
ドローンパイロット不足 | 離れた場所からゲームのように操縦・攻撃可能なドローンは、その攻撃方法から倫理的に問題がある。その攻撃方法から精神的に病むパイロットがおり、配置転換を望むパイロットが多いためパイロット不足の問題がある。 |
誤爆 | GPS等が発達したとはいえ、目視カメラ等を利用した攻撃では誤爆攻撃の可能性がある。 |
軍事ドローンは、戦術に欠かせないものになってきています。
出典:UnsplashのAaron Burdenが撮影した写真
2017年、中国のDJIドローンは中東のテロ組織で利用されていることがわかったのです。
また中東の国、イスラエルの軍事部門でも中国DJIドローンを大量に導入しています。
中国のドローンメーカー「DJI」のドローンは、民間用で比較的、安価で購入できます。
DJIドローンは安価なことに加え、ドローン自体が高性能であることから流通量が多くなっています。
2022年2月からのロシアのウクライナ侵攻でも、両軍で中国のDJIの民間用ドローンが使用されているのです。
ロシアでは、DJIドローンを大量導入し、ウクライナではドローンの熱探知カメラが、夜間のロシアの行動を監視していたのです。
DJI ではこれを受けて2024年4月から、ロシアとウクライナでの事業活動を一時停止しているのです。
出典:(C)DJI
世界のドローンシェアの7〜8割を占め、また軍事ドローンとしても使用されている中国のドローンには、どのようなものがあるのでしょうか。
中国には、「Phantom」シリーズでも知られているドローンメーカー「DJI」があります。
DJIは世界3大ドローンメーカーの1つで、本拠地のある中国の深圳(しんせん)は中国のシリコンバレーと呼ばれ最先端の研究・開発が行われているところなのです。
DJIではドローン本体に加え、ドローンをコントロールするフライトコントロールシステムやカメラの手振れを防ぐジンバル技術を使用したカメラも取り扱っています。
DJIの3大主力ドローンの特徴は、以下のようになっています。
シリーズ名 | 特徴 | 参考写真 |
Spark | 比較的安くて初心者向けドローンで、DJIの中で最も小さいドローンです。DJI初の、カラーバリエーションのあるシリーズです。 | |
Mavic | Mavic ProはSparkが発売前まで、もっとも小さいDJIのドローンでした。Sparkよりも性能が良いシリーズです。 | |
Phantom | 空撮ドローンでは、プロが使用しても問題ない性能を有しており、実際に空撮・測量等でも使用されています。 |
出典:(C)DJI
またDJIではドローン自体の制作・販売以外にも、ドローンに関する教育・サポートも行っているのです。
中国で2023年、中国ドローンの輸出規制の変革が起きます。
ドローンには最新の技術が詰まっており、軍事に転用される可能性が高いのです。
軍事ドローンは遠隔操縦のメリットから近年軍事・紛争に頻繁に使用されるようになっており、戦術が大きく変わってきています。
技術が進歩した現在でも誤爆やドローンのゲーム感覚的な遠隔操縦での攻撃で倫理的な問題から配置転換を望むパイロットも増え、パイロット不足の問題もあります。
中国ドローンは世界シェアの7〜8割を占めており、中国のドローン輸出規制の影響は戦略に影響を与えそうです。